FC2ブログ

HOME>100のお題その1

003:緩やかな痛み

「痛っ!」

鋭い痛みが走った後に、ゆるゆるとした緩やかな痛み。
料理をするのは久しぶりで、少しだけ手元が狂ったようだ。
だがその痛みすら嬉しく思える。
両思い。
なんと素敵な響きだろう。
毎日愛する相手に料理を振る舞う。
それだけでも、幸せ。
私は幸せの絶頂にいるのだ。
緩やかな痛みはやがて血液という液体を吐き出す。
嗚呼、絆創膏何処にやったかしら?

「またあのおばあちゃんよ」

「また?」

「ええ、ぼけちゃっているのね」

介護士はそう言うと棚から救急箱を取り出した。
慣れた手つきで絆創膏を取り出す。

「あのあばあちゃんね、痴呆症なのよ」

「はあ…痴呆ですか」

「可哀想にね。 彼女の頭の中ではまだ結婚したばかりの頃だと思っているの。 旦那さんはもうとっくの昔に死んでいて、ここは老人ホームの中だというのに」

介護士は小さな声で呟いた。

「介護するこっちの身にもなってほしいものだわ」

END.
スポンサーサイト

この記事のトラックバックURL

http://paradox07.blog68.fc2.com/tb.php/12-f5372ec3

コメント

コメントする

管理者にだけ表示を許可する

  Template Designed by めもらんだむ RSS

special thanks: Sky Ruins, web*citronDW99 : aqua_3cpl Customized Version】