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HOME>100のお題その1

004:破壊

「よぉ、新人」

隣の牢屋から下卑た声が聞こえる。

「…何か?」

若い男は抑揚のない声で隣人に返事する。

「あんたは何をやらかしたんだ?」

「…今からやらかすんですよ」

「はあ?」

「この腐りきった国をこれからぶっ壊すんですよ。 ま、その内あなたにも分かりますよ」

「へぇ…」

姿の見えぬ隣人は、それきり若い男に話し掛けるのはやめた。

翌日。
若い男は国王の前へと引きずられていく。
国王は横柄な態度で若い男に言った。

「お前にもう一度チャンスをやろう。 見よ」

国王が指差す方向を見ると、そこには2つの扉が並んでいた。

「片方には国で一番の美女、もう片方には腹を空かせた凶暴な虎が待機している。 運がよければ命は助かり、運が悪ければお前は死ぬだろう」

「…昔から変わってないですね、その処刑方法」

「ああそうだ。 誰ひとり美女のいる扉を開けたものはいない」

「処刑方法を変えなかった事に後悔するがいいさ」

若い男は小さく呟く。
突き刺さる周りの視線。
国王の挑戦的な笑顔。

「右の扉か左の扉か…で悩むから駄目なんだよ。 俺はね…」

若い男は両方の扉を開けた。
瞬間、笑顔で登場する美女と勢いよく飛び出す凶暴な虎。
2つの扉を盾がわりにした若い男は冷めた目でその光景を見つめていた。
悲鳴を上げる美女、暴れる虎。
鮮血がほとばしる。

「俺は地位も名誉も女も金も何も要らない。 この国が破壊されればそれで十分なんだよ」

若い男の呟きは多くの悲鳴によってかき消された。
腹を空かせた虎は国王に襲い掛かる。
逃げる間もなく国王は肉の塊へと変化する。
その光景はさながら、地獄絵図のようだった。
国王が食われている隙に、若い男は地獄から脱出する。
国の外で中年の男が腰を抜かしていた。

「お、お前…本当にやりやがったな…」

そいつは昨日、隣の牢屋から話し掛けてきた囚人であった。

「この国を破壊しやがった!!」

「ええ、おかげさまで」

何がどうおかげさまなのかは分からないが、ゆっくりとした動作で会釈する。

「お前、これからどうするんだ?」

「どうもしませんよ。 ただ1つ言える事は…」

俺は自由を手に入れたんです、と若い男は妙に晴れ晴れとした表情で言い放った。

END.
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