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HOME>100のお題その1

068:一人旅

※この物語はフィクションです。
実在の事件・団体・個人・実在の神風圭市さんとは何ら関係はありません。
交通ルールを守って車を運転しましょう。


私に愛や恋は必要ないのね。

【068:一人旅】
兵庫県神戸市内から車でおよそ3時間。
上司から半ば無理矢理2日ほど有給を取らされて暇だったので。
私は愛車のミラジーノに乗って一人旅をする。
あれから。
あれから約4年という月日が流れていった。
私にとって滋賀県で過ごした1年半は色褪せた過去の記憶で。
4年の間にあのあたりはどうなったんだろうという単純な理由から私は気ままにハンドルを切る。
ETCレーンを通過して、まずは宝塚方面へと。
眠気をガムと共に噛み殺しながら、4年前の流行歌を陽気に口ずさむ。

「うわっ…」

左車線をのんびり80kmで走行していたら、背後からスポーツカーに煽られた。
バックミラーで確認すると、青色のRX-7。
さらにルームミラーで背後の運転手の人相をチラ見する。

「おっさんや…」

30代後半から40代前半の男が私の車を煽る。
右車線は嫌というほど空いているというのに。
いわゆるひとつの。

「ストレートファイターって奴…?」

ああ嫌だ。
非力な軽自動車を普通車が煽って恥ずかしくないんだろうか。
こっちは免許取って5年だけどまだ不安だからという意味で初心者マークまで貼付しているというのに。

「女の運転が怖いって思い知らせてやろうかしら…別次元的な意味で」

幸い、ここはスピード取締りを行っていない地点だったので私はニマニマと満面の笑みを浮かべながらアクセルを床までガッツリと踏み込んだ。
私は車のハンドルを握ると人格が変わる…らしい。
自覚はないが、イライラするのと比例して笑顔になっていくんだそうだ。
それ、笑顔じゃなくて緊張で顔の筋肉引きつってんじゃないの?
よく分からない。
が、これだけは言える。
法定速度をぶっちぎってる訳だから、よい子は絶対に真似しないでね。

「Remember the feelings, remember the day♪My stone heart was breaking♪ My love ran away♪ This moment I knew I would be someone else♪ My love turned around and I felt♪

Be my bad boy, be my man♪Be my week-end lover♪But don't be my friend♪
You can be my bad boy♪But understand♪
That I don't need you in my life again♪

Won't you be my bad boy, be my man♪Be my week-end lover♪But don't be my friend♪
You can be my bad boy♪But understand♪
That I don't need you again♪

No I don't need you again♪

You once made this promise♪To stay by my side♪
But after some time you just pushed me a side♪You never thought that a girl could be strong♪
Now I'll show you how to go on♪

Be my bad boy, be my man♪Be my week-end lover♪But don't be my friend♪
You can be my bad boy♪But understand♪
That I don't need you in my life again

Won't you be my bad boy, be my man♪Be my week-end lover♪But don't be my friend♪
You can be my bad boy♪But understand♪
That I don't need you again♪No I don't need you again♪」

嗚呼、懐かしい。
Bad Boyを歌いながら直線道路をひた走る。
ガチガチにチューンされた軽自動車、私のミラジーノは青のRX-7をやすやすと引き離していった。
確かに、軽自動車は非力。
それは紛れもない事実だ。
でも、この軽自動車は改造好きな兄が勝手にフルチューンした特別製である。
アクセルを踏めば200kmを軽くオーバーする。

「快っ適~!!」

真のストレートファイターは法定速度も警察に捕まるリスクも関係なしに脳味噌すっからかんにしてアクセル踏んで時速200km以上のスピードを維持するものなのだ。
いや、この定義多分違う。
何だ真のストレートファイターって。
そんな思考をつらつら垂れ流しつつ、ミラジーノはちょっぴり駆け足で滋賀県へと。

「げっ」

京都で盛大に渋滞に引っかかった。


湖南市は相変わらずだった。
畑と、工場と、小さなコンビニと。
それぐらいしか目印がなかった。
途中、道に迷いそうだった。
滋賀県に住んでいた頃の私も、人生という道の迷子だった…んだろうか?
問いかけても答える人はいない。
だって、一人旅だから。

「暑」

車を駐車場に停めて、私は歩く。
ただひたすら、真っ直ぐに。

「I'm a Straight Fighter!!ヒャハー!!」

叫んでから思った。
何だ私、頭沸いてんのか。

「左手に、旅館」

まだあった。
寂れてうらびれて朽ち果てて今にも潰れそうだったのに…失礼、悪気はないのだよ。

「あー懐かーしーいー!!」

懐かしさで懐か死にしそうだ。
懐か死にって何だよ。
頭沸いてんのか。

やがて、右手に神社が見えてくる。
上枝神社だったか日枝神社だったか。
私の一人旅の目的地。
あの頃と何ら変わってない。
石でできた鳥居さんをくぐって。

「叶…?」

「あ…」

突然、名前を呼ばれた。
私の名前を知っている友人なんていない筈なのに。
痛い。

「やっぱり…!叶だ!!」

痛い。
軽々しく名前を呼ばないで。

「元気にしてたんだな」

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
私の心を。
心臓を引っ掻かないで。

「あれからお前の事が気になってさ」

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
心と身体が悲鳴をあげている。
この土地に私の名前を知っている友人はいない。
でも、私の名前を知っている恋人はいた。
勝手に向こうから告白してきて、勝手に向こうから別れをきり出した身勝手な。
そう、もう過去の事なのに。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!

Bad Boyの和訳が脳裏をかすめる。

「おい、どうしたんだ?」

あの日を、あの気持ちを思い出すと
私の石の様な心は壊れて、愛は何処かへ行ってしまった。
瞬間、私は私じゃない他の誰かになってしまった。
愛がそっぽを向いてしまったと分かった…

悪い男(ひと)、私のひと
週末だけの恋人、だけど、友達じゃない
あなたは私の悪い男かも知れないけど
わかって
あなたに戻って欲しいんじゃない。

悪い男(ひと)、私のひと
週末だけの恋人、だけど、友達じゃない
あなたは私の悪い男かも知れないけど
わかって
あなたに戻って欲しいんじゃない。
そう、もう必要ないの…

あなたは約束したわね私のそばにいるって。
だけどいつしかあなたは私を離したわね、あの頃の私が強いかもしれないなんて思いもせずに。
さぁ、これからどうするか教えてあげるわ

悪い男(ひと)、私のひと
週末だけの恋人、だけど、友達じゃない
あなたは私の悪い男かも知れないけど
わかって
あなたに戻って欲しいんじゃない。

悪い男(ひと)、私のひと
週末だけの恋人、だけど、友達じゃない
あなたは私の悪い男かも知れないけど
わかって
あなたに戻って欲しいんじゃない。
そう、もう必要ないの…

「馴れなれしくしないでよっ!!」

思い出した。
こいつ、最低な男だった。
殴った。
走った。
ぜえぜえと呼吸がうるさい。
でも、とにかくまとわりついてくる過去が嫌で。
走って逃げた。
愛車に飛び乗った。
嗚呼、散々な一人旅だ。

「叶…!!」

もう、一人旅なんてしない。
もう、恋なんてしない。
私には車があればいい。


END.
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