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HOME>100のお題その1

076:白い狂気

雪よ。
白い雪よ。
全て覆い尽くしてこの町を消し去っておくれ。
醜い部分を隠して。
私はもうどうなっても構わない。

【076:白い狂気】
それは、近い将来の話…になるかもしれません。

http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0003637196.shtml

20××年、1月17日。
兵庫県神戸市北区某所。
鉄道がなくなってしまった町。

かつては人口も多く、そこそこ賑わっていた街。
田舎でもなく、都会でもない。
いつか誰だったか、そこを「中都会」と表現したその場所は、今では老い衰えた農村と化していた。

「おばあちゃん、昔の話聞かせてよー!!」

私の孫が、数年振りに遊びに来た。
来年、中学生になる孫は、この町の昔の事を調べてくる宿題が出されたようで、ノートとペンを片手に私の元へと駆け寄ってくる。

「そうかい、じゃあ少しだけね…」

私は部屋のタンスの引き出しから、数冊のアルバムと小型のノートパソコンを取り出す。
パソコンとプリンターを接続し、アルバムの写真といくつかの画像ファイルをコピーして印刷する。
口で説明するより、写真や絵があった方がいいだろうと思い、私は孫に印刷された写真を手渡した。

「これは、この町が盛んだった頃、走っていた電車だよ」

神戸電鉄、粟生線。
古くは創業時の社名の略称から神有(しんゆう)、現在は神鉄(しんてつ)と呼ばれ、沿線には神電(しんでん)と呼ぶ年配者もいる。
赤と白が特徴的なその電車は、私が小学生だった頃から町を走っていた。
だけど、なくなった。

「どうして?どうしてなくなったの?」

「それはねぇ…」

まず1つに、運賃が非常に高い…ということ。
日本で2番目に運賃が高いと評されるその鉄道は、JRの地方交通線運賃より高い。
また、路線の7割が山岳区間であること、乗客数の伸び悩みの影響…マイカー利用への転換や少子高齢化に伴う通学者の減少で更に悪循環を呼び、私が26歳位の頃、その鉄道は無くなってしまったのだ。
以来、この町の人口はみるみるうちに減り続け、ゴーストタウンと化し、今では農村地へと退化してゆく。

それが。
現在の町の姿。
車がないと不便なこの町。

「へぇ~…おばあちゃんが若い頃は電車も走ってたんだね…」

「そうだね…」

たとえこの町が老いても。
私はここに留まり続けた。
何か理由があったわけではないけれど。
懐かしい過去に思いを巡らせていたその時。

ドォォォオオオオオオオオオオオオオオオン!!

という轟音と共に地面が揺れる。

「危ない!伏せて!!」

私は咄嗟にひざ掛けを孫の頭に被せる。
その間も轟音と共に地面が揺れ続ける。
地面の揺れには覚えがあった。
記憶の奥底からある言葉が浮かび上がる。

阪神・淡路大震災。

死者:6,434名、行方不明者:3名、負傷者:43,792名の死傷者数を出した大規模な地震災害。
阪神高速道路神戸線の倒壊、国道28号の陥没。
記憶が、過去が、フラッシュバックする―――


鉄道のなくなった町。
更に地震で倒壊した町。
交通手段の断たれたこの町。
食糧の配給は難しく、阪神・淡路大震災の時よりも最悪の事態を招いていた。

見捨てられた町。

どこかで誰かがそう表現する。
その通りだ、と思った。
地震から一週間が経過した。
近所のスーパーからは食糧という食料が消え失せ、人々は痩せ細り、事件…犯罪が多発しているという有様。
そして―――

あたり一面の、雪。
白い狂気が猛威をふるう。

「おばあちゃん…」

「ああ…もうこの町は駄目かもしれないね…」

白い息と共に呟きは町の中へと流れて消えた。


END.
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