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HOME>100のお題その1

007:偶然

偶然か何なのかは知らないが、こういった体験は初めてである。
もっとも、こんな経験はもう二度としたくは無いが。
海外ツアーに添乗員になってから早5年。
ハイジャック犯に遭遇したのはこれが初めてだった。
僕はうとうとと目的地に着くまで一眠りしていた。
何分くらい眠っていただろうか。
突然、機長の放送で目が覚めたのである。

「ご乗客の皆様、大変申し訳ありませんがもう一度座席ベルトをお付け下さい。 でも、この飛行機に異常はありませんのでご安心下さい」

旅客機が成田空港を飛び立ち、水平飛行に移り、座席ベルトを外していいというサインが出て数十分。
本来なら着陸前まで座席ベルトを付ける必要は無い筈だが、機長は若干震えた声でこう放送したのである。
さて、そこから客席では不安なざわめきが起こったのは当然の事。
機転を利かせたスチュワーデスが笑顔で客の動揺を一瞬にして鎮めながら、座席ベルトを付けるのを手伝う。

「何があったんだ?」

とスチュワーデスに尋ねたが、

「いえ、何も…」

と強張った笑顔で対応するだけだった。

「騒ぐんじゃねぇ! 抵抗すると撃つぞ」

突然、通路の後ろから覆面をした男がピストルを突きつけながら現れる。
スチュワーデスは日本語の分からない外人客の為に、今現在の状況を英語で通訳する。

「乗客の皆様、この機は只今ハイジャックされております。 騒がないで、大人しく席についてベルトを付けて下さい」

スチュワーデスも空いてる席に座り、ベルトを付ける。
そこへ、もう1人の覆面男がピストル片手に現れ、乗客やスチュワーデスが全員ベルトを付けるのを確かめた。
その数秒後である。
事態は一変してあっけない幕切れに終わったのだ。
通路に立っていた犯人2人はそばにいた乗客達に取り押さえられたのである。
後で分かった事だが、操縦室で機長にピストルを突きつけて脅していた犯人も、難なく副操縦士に取り押さえられていたというから驚きである。

「この野郎!!」

ついでだから一発殴っておいた。
さて、何が起きたのか?
そろそろ謎解きといこうか。

ハイジャック犯と僕らを乗せた旅客機はエアポケット(乱気流)に落ち込んだのである。
その為、機体はおよそ50メートル落ち、それからまた30メートルほど跳ね上がった。
座席ベルトを付けないで通路に突っ立っていたハイジャック犯は当然、エアポケットに落ち込んだショックで天井にしたたか頭を打ち付けて倒れ気絶したのである。
乗客やスチュワーデスは全員ベルトを付けていたので無事、というか気絶したハイジャック犯を取り押さえて元気にフルボッコしていた。
偶然って怖いね。

END.
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