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HOME>100のお題その1

091:夕日

顔が赤くなってるのは、夕日のせいか照れてるせいか。
どうかその想い届きますように。
ちっぽけな存在の私は君を見守ることしか出来ないけれど。

【091:夕日】

2月14日が終わろうとしていた。
都会でも田舎でもない、形容するとしたら中都会と呼ばれるその街の1日が終わろうとしている。
夕日が優しく辺りを包む。
とある高校の体育館裏。
2人の少女が苦悩する。

バレンタインなんて大嫌いだ。
菅野 陽子(すがの ようこ)は毎年バレンタインになると憂鬱になる。
男勝りな彼女は、外見も言動も男らしい。
スポーツ万能、成績優秀。
女子の間ではファンクラブまであるくらいだ。
バレンタインになると毎年女子に追い掛け回され、いくつものチョコレートを押し付けられる。
だからこそ、陽子はバレンタインが嫌いなのである。
今日だってずっと逃げてきた。
夕日を眺めながら、陽子は体育館裏でほっと一息ついた。
ここなら、誰も来ない。

バレンタインなんて大嫌いだ。
竹内 絵里奈(たけうち えりな)は今年のバレンタインで落胆した。
お菓子作りが得意な彼女は、外見も言動も女らしい。
勿論、料理だって得意。
男子の間ではマドンナと称されるほどである。
今日は好きな男子にチョコレートを渡そうとした。
だけど、その男子は競争率の高いイケメン。
チョコレートを女子から沢山貰っているのを見てしまった。
そして、その貰ったチョコレートを他の男子にあげている所も目撃してしまった。
正直、幻滅した。
彼女はあてもなくふらふらと体育館裏まで歩いてきてしまった。
ここなら、誰も居ないから泣き顔を見られることもない。

誰か来る…?
陽子はドキッとした。
またファンクラブの子が自分にチョコレートを渡しに来たのかと思った。
けど、どうも様子が違う。
誰かが…泣いてる…?

「おい、大丈夫か」

陽子は思わず声を掛けた。

「ひゃっ…!?」

大丈夫かと声を掛けられて、絵里奈は飛び上がる。
まさか体育館裏に人がいるとは思わなかった。

「あ、え…っと…そのなんでもないです…」

消え入りそうな声で答える。
だけど涙腺は緩みっぱなしで涙なんて止まりそうにない。

「何でもないってことはないだろ」

ベリーショートの髪型の…確かファンクラブまであるんだっけこの人…
絵里奈はボーっとそんな事を思い出した。
綺麗な人。
少し切れ長でつり目で。
女性から見てもかっこいい陽子は、参ったなと頬を掻く。

「…ふられたのか?」

包み隠さず陽子は絵里奈に問う。
可愛い子だな。
確かお菓子作りが得意で…男子の間ではマドンナって呼ばれてんだっけ…
大きな瞳で優しい顔立ちの彼女は、ポロポロと涙を流し続ける。

「私、バレンタインが大嫌い」

絵里奈はボソッと呟く。

「気が合うな。僕もだ」

「え?」

「僕さ、外見も言動もガサツじゃん?なんて言うかその…毎年バレンタインに追い掛け回されるんだよな…女子に」

「そんな」

「嘘みたいだろ?でも本当なんだ。僕はそれが嫌でさ、今日はこうして体育館裏で隠れてたんだ」

陽子はヘヘッと無邪気に笑う。

「あのね、私はね。好きな男の子がいたの。その男子は競争率の高いイケメンでね。チョコレートを沢山貰っているのを見ちゃったの。それだけならよかった。でも、その貰ったチョコレートを他の男子にあげている所も目撃してしまったの…正直、ショックだったわ」

「そっか…人それぞれ悩みがあるんだなぁ…」

「私どうすればいいんだろ…折角作ったのに無駄になっちゃった…」

「無駄なものなんて無いよ」

「え?」

「お菓子づくり得意なんだろ。僕さ、その…一度食べてみたいんだ。君のお菓子」

恥ずかしくて視線を合わせられないといった風に陽子は顔を逸らす。
絵里奈は驚いた表情で陽子を見つめる。
夕日が二人を包んだ。
2人の顔は真っ赤だった。


END.
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