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095:予言

それはひょっとしたら動物としての本能なのかもしれない。

【095:予言】

「お前の子供がお前のことを殺すだろう」

古代ギリシャの話です。
テーバイ国の王、ライオスは予言者から予言を受けました。
これを聞いたライオス王は生まれた子供をすぐに殺そうとしました。
しかし、彼はどうしても自分の手で子供を殺すなんて出来ませんでした。
そのため生まれた赤ん坊の足に釘を刺し、羊飼いに捨てに行くようにと命じました。
しかし羊飼いも人の子。
赤ん坊を不憫に思い、コリントスという国の王の所へ連れて行きました。
その子は『オイディプス(腫れた足)』と名付けられました。

さて。
オイディプスはすくすくと育ちついに成人しました。
その時彼はある神託を受けます。
『お前は父親を殺し、さらに母親とむすばれるだろう』
オイディプスはものすごいショックを受けました。
彼は育ての親たちを自分の両親だと信じて疑わなかったのです。
そのため彼は育った国、コリントスには帰らずちょうど逆の方向へ行くことにしました。
それこそが生まれ故郷のテーバイの方向だったのです。
途中の狭い山道で彼は馬車と出会います。
馬車の中には一人の老人と従者。
両者はすれ違おうとしますが、山道が狭いためお互い通れません。
両者は口論になりました。
腹を立てた馬車の老人はとうとうオイディプスの頭を殴りつけます。
目には目を歯には歯を。
オイディプスは老人を馬車ごと谷底に突き落としてしまったのです。
オイディプスはにこやかにテーバイの方向を目指します。

やがてテーバイに到着したオイディプス。
この国の国民達はスフィンクスという魔物によって悩まされていました。
スフィンクスは通りすがりの旅人に「クイズ」を出し、そのクイズに答えられないと食べてしまうという非常に厄介な魔物です。
スフィンクスはオイディプスにクイズを出します。

「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足とは何か?」

人生を朝昼晩に例え、生まれた時は四つんばい、成人になると立って歩き、老人になると杖をついて3本足という理由から、オイディプスは「人間だ」と答え、見事に正解します。
問題を解かれたスフィンクスは死んでしまいました。
スフィンクスを倒したオイディプスは未亡人だった王妃と結婚しました。
なんとこのテーバイ国の王は数日前、何者かに殺されてしまったというのです。

すなわちこの瞬間、「父を殺し母と結ばれる」という予言は完全に的中してしまったのです。

さてさて。
そんな事情を知らないオイディプスは王妃イオカステと共に幸せに暮らしていました。
しかしその幸せも長くは続きません。
テーバイ国はこれ以上無いほどの飢饉や災害に見舞われ始めたのです。
そこでオイディプスは有名な予言者テイレシアスを呼び、原因は何かを探らせます。
テイレシアスは言いました。

「この飢饉や災害は前の王ライオスを殺した人間が生きているせいです」

「何だと?それは一体誰なんだ」

「お気の毒ですがオイディプス王、あなたです」

「そんな馬鹿なことがあるわけないだろう!!」

当然オイディプスは否定します。
すると王妃は加勢するかのように予言者に言います。

「そうよ!こんな予言者の言うことなんてアテにならないわ!大体、前の王ライオスだって『息子に殺される』なんて予言を受けたのに、結局は山賊によって谷底に落とされて死んじゃったのよ!!」

ライオスはその瞬間にその山賊が自分だったと直感しました。
オイディプスは確かめるように王妃に聞きます。

「その山賊というのはどんな奴だった?服装とか、髪型、なんでもいいから教えてくれないか」

「間一髪逃げた従者によると、精悍な顔つきをしていたそうです。どことなくオイディプス、あなたに似ているような…」

オイディプスは確信し、一人で思い悩みます。

『そんなはずはない…私の父があの時の老人のはずがない…そうだ、愛するこの妻が母なんてことがあるはずがない…』

オイディプスは自分に言い聞かせるように心の中で呟くと、王妃イオカステの瞳を見つめます。
その目は何処か懐かしく、そして温かな光がありました。

もし。
もし全てが本当で。
予言者の言うことが本当だとすると。
目の前に居る王妃は紛れもなく母親です。

『あなたは あなたは 私の母なのですか?』

その言葉が胸の奥から何度も出かかります。
でもどうしてもそれが言えません。
言えるはずがありません。
そう聞くことは全ての現実…予言者の言葉を認めることだからです。

父を殺したこと。
母を抱いたこと。
それは自分だけではなく母にも同じ重荷を背負わせることになります。

王妃イオカステはその瞬間、オイディプスの表情から全ての真実を感じ取りました。
イオカステは生まれて初めて妻ではなく母としてオイディプスのことを抱きしめました。


END.
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