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002:温度


「サムライ」という日本人がいました。


【002:温度】


酷く長い夢を見ていた気がする。
その間、僕の身体は凍えきっていて。
寒く暗い闇の中で胎児のように丸くなっていて。
体を動かそうと思っていても、身動きひとつ取れなくて。
助けて…助けて…僕をこの暗闇から出して…
と声も上げることすら出来ずに。

僕は不治の病に侵されたまま。
身体を冷凍保存された。
未来で僕の病の治療法が確立されるかもしれないから半ば強制的に。
僕は何十年…いや、ひょっとしたら何百年何千年の先の未来で解凍されるのを願って。

「いいか…解凍するぞ…」

誰かの声が聞こえた。
心の中で僕は飛び上がるほど狂喜した。
少しの不安と大きな希望を抱きつつ、僕の身体は少しづつ解凍されていく。
凍え切った身体はやがて暖かく満たされる。
僕は、なんて幸せ者なんだろう。
そっと目を開ける。
眩しい光が僕を照らした。
目の前にいたのは緑色の髪をして、赤い瞳を持つ奇抜な人物だった。

「おはよう、君の病気は完全に治療法が見つかって完治した。ここはアメリカの医療研究センターだ。気分はどうだい?」

「最高です」

「それは良かった」

「僕はどれくらい眠っていたんですか?」

「そうだね、およそ50年といったところか」

「へぇ…意外と年数は経ってないんですね…」

「そうだね」

「僕の家族…いや、子孫は居ますか?」

「残念ながら一人も居ないよ」

「そうですか…」

僕は少しだけ落胆した。

「これから君はどうするつもりだい?」

「日本に帰ります」

緑色の髪をして、赤い瞳を持つ奇抜な医師は黙って首を振った。

「残念ながら、日本人は君しか居ないよ」

「えっ…」

「日本は滅びたんだ。地震、という災害でね」

「そんな…」

希望に満ちて暖かくなったはずの僕の身体が再び冷え切っていく気がした。


昔々。
『サムライ』という心の優しい日本人がいました。


END.
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