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HOME>100のお題その2

013:釘

※この物語はフィクションです。
実在の人物・事件・団体には関係ありません。
ありませんってば。

Rev Limit番外編

【013:釘】


【――――昨夜午後9時22分頃、再度山に釘を撒かれ、病人を運んでいた帰りの救急車がパンクし、救急隊員が車を降りた所を襲撃されて救急車が盗まれるという事件がまた起きた模様です…】

非番で休日の警察官、高木ヒロユキはテレビをつけたままうたた寝していたが、ハッと目を覚ました。
兵庫県神戸市の片田舎でその事件はゆっくりと幕を開ける。

道路に…釘…?

高木は表情を険しくした。
過去に一度、道路に大量の油が撒かれ、暴走族チーム『Last engel』の集団が事故を起こした事件とわずかながらに似ているのだ。
当時、総長だった服部 礼司が死亡し、副総長の相良 走一が肋骨の骨を折るなどの重体、特攻隊長の流 健二、他数十名が重軽傷。
暴走族に何か恨みがあったのかもしれない。
だけど、もし一般者が事故して死亡していたとしたら…?
未だに犯人は捕まってないまま時効を迎えた。



兵庫県神戸市某所午後7時12分 相良 走一の家

そーうーいーちーくーん!!あっそびましょー!!

トレードマークは眼鏡と金髪、と言えそうなチャラチャラした風貌の青年が、走一の家の前で大声を出した。
瞬間、走一は鬼の形相で玄関のドアをブチ開け、チャラ男の腹部に

へごっ!?

パンチをシュート!!

超!エキサイティンン!!

チャラ男は絶妙なタイミングで昔よく流れてたおもちゃのCM(だった気がする)のナレーターの声を演じた。

うるせぇ健二。黙っとけ。もう一発腹部に入れるぞ?ていうか近所迷惑だから毎回毎回人ん家の前で大声出すのやめろ

辛辣なセリフをチャラ男…もとい流 健二に吐き続けながらも、しっかりと家に入れてあげる優しさ、Priceless

わかった、今度から色っぽい喘ぎ声にs

マジでキチガイじみてるからやめろ。全力でやめろ。腹部にパンチを連打したくなる

ァアン、走ちゃんたら意地悪ぅ

どすっ、ばすっ、めこっ。
走一は遠慮なく健二の腹部にパンチを連打した。

腹部に何の恨みが!?

パンチ連打をされても、健二は顔をしかめるだけで済んでるのは、やはり工事現場で働いてるという身体の頑丈さからか。
そんないつもの漫才的やり取りはいつもの光景。
勝手知ったるなんとやらで、健二は冷蔵庫からカルピスを2人分入れて走一に手渡す。

なー走一ぃ、テレビ見た?

健二は開口一番に走一に訊く。

見てねぇよ見る暇ねぇよ。お盆前からずーっとデスマーチでろくに飯も食ってねぇの

何かパスタ的な物作ってやろーか?

言いながら、健二は既に鍋に水と一握りの塩を入れ、火をかけている。
スパゲティの束を取り出し、手際よくキャベツとアスパラを刻んでいく。

おー…前々から思ってたけど、健二って意外に器用だな

意外にって何だよ

健二、結婚してくれ

俺は男でお前も男で日本の法律じゃ無理だし、何より俺にはもう嫁がいる

2次元の?

3次元だよ馬鹿wwww

笑いながら、スパゲティの束を鍋に入れて茹でる。
その間、健二はまた口を開いた。

えーっと…何の話してたっけ?ああ、そうそう、テレビだよテレビ

だから、見てねぇ

再度山に釘が撒かれて、救急車のタイヤがパンクして立ち往生していた所で救急車が盗まれたんだってさ

はぁ?

道路に釘撒くとか俺達が事故した時の事思い出さねぇか?

!!

走一はハッとして健二の顔を見る。
普段はちゃらんぽらんなこの男だが、交通事故で服部 礼司が死んだ事件は忘れてはいない。
いや、忘れられることができない…と言った方が適切か。
健二は茹でたスパゲティをフライパンに移すと、先ほどのキャベツとアスパラ、そして塩コショウとバターとツナ缶を開けて一気に炒めること数分。

でん。
皿に無骨に盛り付けたパスタと箸を走一の前に置く。

腹が減っては戦はできぬ!!走り屋達はドリフトできぬ!!俺特製ただのパスタ、召し上がれ!!

ちょ、これ量多くねぇか?

うるせぇ黙って食え。もりもり食って食欲を満たしたまえ。ただしお残しは許しまへんで

何で上から目線なのwww

俺も食っていい?

お前も食うんかい!!

健二の作ったパスタは美味かった。
走一は無我夢中で食べ続ける。

なぁ、走一

んゅ?

いちいち反応可愛いな畜生…じゃなくて走一、この事件の犯人捕まえに行かないか?

すごく…面倒くさいです…

ああ…うん…そうだよね…走一は絶対そういうの嫌がる人種だよね…だが断る

んゅ!?

よし、走一くんの腹ん中もパンパンになったことだし、犯人捕まえに行こうぜ!!

健二、お前さ…話聞いてた?嫌だっつったんだけど?

時に走一くん、ゲームの中の王様って話聞かないよな。魔王倒しに行けって勇者が断っても何回も言うし

ゲームの話はしてないんだけど!?

勇者 そういち よ! 再度山 に 盗賊 が 出る らしいのじゃ! 退治に 行って くれ

→はい
 Yes
 わかりました
 よろこんで
 むしろこの雌豚めをぶってくださいご主人様

ちょ、健二!?これコマンド「はい」しかねぇじゃねぇか!!なんか危ないのもあるし!!

おお 勇者 そういち よ! 行ってくれるのだな!!

話聞いてた!?健二!!おーい!?



兵庫県神戸市再度山午後9時。

何で俺、健二の言うがままなすがままに再度山に連れてこられちゃったんだろう…

坊主だからさ!!

健二、何その某ロボットアニメの有名なセリフのパクリみたいなアレは。ていうか俺坊主じゃねぇし

藍坊主

日本のロックバンドの名前出しちゃらめぇぇぇぇぇぇ!!

時に走一君、地面にこんなものが落ちてたんだが

健二は言いながら、地面から小さな金属片を拾い上げた。
否、それは金属片ではなく…

釘…

宮理恵

健二でも走一でもない第三者の声が背後から響く。
健二と走一は高速で振り向いた。
高木ヒロユキ。

高木さん…声優の名前出さないで!色々ギリギリだから!!

兵庫県警の警察官、高木ヒロユキはくぎゅくぎゅと謎の奇声を上げながら健二の持ってる釘をまじまじと見つめつつ、2人に話し掛ける。
今日は制服じゃなく、私服だ。

健二君、走一君。まさかとは思うが、また変な事件に首突っ込んでないよね?

「「ヴッ」」

何?今の携帯のバイブのような声。まさか君ら本当に事件に首を突っ込んでたのか?何の事件だ!?答えによってはしょっぴく所存だが!?

ちょ、ちょちょちょちょい待って下さいよ高木さん。高木さんは何故ココに居るんです?

健二は180度話を強引にねじ曲げる。

俺は…その…パパッ、パトロールですぅー

高木の目は波をチャプチャプかきわけて見事に泳いでいる。
パトロールじゃない事は明らかだった。
何故なら、パトロールなら私服ではなく制服を着ている筈だからである。

もしかして、高木さんも救急車の事件調べてるんですか?

走一は高木に尋ねると、高木は深ーく長ーい溜息をついた。

やっぱり、お前らもか…

高木はコンビニで買った缶コーヒーをチビチビ飲みつつ話す。

まあ、テレビで見た通り、昨夜の午後9時22分頃、再度山に釘がバラ撒かれ、病人を運んでいた帰りの救急車がパンクし、立ち往生した所を襲撃されて救急車が盗まれたっていう事件が起きてな…個人的に調べてたんだよ、俺も

あーやっぱり高木さんも調べてたんスねー、奇遇ー

うるせぇ金髪チャラ男

ちょっと金髪チャラ男は黙ってろ

金髪に何の恨みが!?

いじける健二をよそに、走一と高木の話は続く。

高木さん、単刀直入に訊きますけど何処まで情報掴んでます?

これはまだ未公開情報なんだけど…実はここのところ救急車はもう2台盗まれている

2台も?

ああ、2台とも同じ手口・同じ場所でね。いつも釘がバラ撒かれて救急車がパンクし、隊員が運転席から降りた瞬間を狙われているんだ

釘の出所は?

ホームセンターで流通しているごくごく一般的なものだから手がかりにはならないね

ふーむ…

走一は考えこむ仕草をしていたが、やがてスッと顔を上げ、再び高木に問う。

高木さん、ちょっと訊いていいですか?

俺で分かることなら何でも

今日、救急車はこの道を通りますか?

高木は黙って首を縦に振る。

そうですか

何か、分かったかい?

走一は分からない、とだけ答えた。

何かヒントでも…せめて犯人の意図だけでも分かればいいんだが…

犯人の意図なら分かりますよ

なんだって!?

高木は走一に詰め寄る。
ガクガクと走一を揺さぶりながら頼む、教えてくれと懇願した。

高木さん、落ち着いて下さい。簡単ですよ。金、もしくはコレクション目的です

金目当てとコレクション目的だって?ははは、まさか…

そこで今まで黙っていた健二が口を開く。

高木さん、もしかして知らなかったりする?

知らないって何をだい?

救急車ってマニアの間で高く売り買いされてるって話



日本で救急車を納入する場合、基本的に競争入札が一般的なんだよ。イコール…?

健二の問いに走一が答える。

自動的に救急車は高価なものになる。ましてや、新しければ新しいほどマニアの間では値段が高騰する。安く仕入れる事が出来れば高価な金額で売れる。犯人は超弩級の救急車マニアか、金目当ての窃盗犯だよ。恐らく数人の

数人だって!?

そりゃ、そうだろ。日本の救急車は隊員2人以上乗るのが基本だからな

あ、そっか…

ていうか高木さん交通課でしょう?何でそんな初歩的な事忘れてんすか!!

いや、ほら…もう俺30代だし…脳味噌退化してってるんだよ…

「「おっさん…」」

おっさん言うな!!

…とにかく、今日救急車はここを通るんだろう?ならば窃盗犯捕まえるいい方法思いついたから、ちょっと耳貸せ

走一は笑った。


兵庫県神戸市再度山午後9時30分。
急カーブのきつい再度山を救急車が走ってゆく。
やがて、救急車は速度を緩めて止まった。
何か釘のようなものを踏んだらしく、不審に思った救急隊員が一人車から降りる。
地面には大小様々なサイズの釘が一面中にばら撒かれ、その中の1つがタイヤに刺さったらしく、空気が抜けてパンクしていた。
車から降りた救急隊員はしかめ面を浮かべながら、運転席にいるもう一人の救急隊員に報告しようとして…
背後から近づいてきた2人組の男に口を塞がれた。
2人組はそのまま救急隊員を縄で縛り付け、運転席のドアを開け、もう一人の救急隊員を羽交い絞めにして。
救急車を奪うのに成功するところだったが。

はい、そこまでー

警察手帳をヒラリと見せながら、高木は柔和な笑顔で窃盗犯2人組の男の肩をポンポンと叩いた。

「な、何だ貴様は!?」

さっき警察手帳見せたじゃん。俺、高木ヒロユキ。兵庫県警交通課の巡査長やってるけど、質問ある?

「うるせぇ!!」

2人組の男は高木の手を振り払い、すかさず蹴りを入れようとした。
バシッ、と音を立てて受け止めたのは健二。

おいおい、暴力はいけないなぁ、暴力は

「何っ!?誰だ貴様!?」

…おたくらさっきからそればっかだな。俺、流 健二。昔は特攻隊長、今は土方兼警備員やってるけど、質問ある?

高木を倣ってニッと人懐っこい笑顔を浮かべながら自己紹介する。
数秒間の沈黙。

おい、走一!!次お前だぞ?

え、俺ぇ!?

You、名乗っちゃいなよ★

断固拒否す

言い終わる前に、窃盗犯2人組に殴りかかられる走一。
間一髪で避けると、走一は人格が変わったように窃盗犯2人組に蹴りを入れた。

ガンッ!!

せめて言い終わるまでは聞けやぁ!!

と、いう訳で3人揃って正義のヒーローでっす★

「「うるせぇ金髪チャラ男」」

だから金髪に何の恨みが!?

「うるせぇ死ねぇ!!」

隙あり、といった風に3人に殴りかかる窃盗犯2人組。

「「「お前がな」」」

高木、健二、走一の3人はそれぞれの得意技で窃盗犯をボッコボコにしてゆく。
窃盗犯2人組の戦意が失せた所で、走一は言う。

ところで、何で高木さんは今日、ここで救急車が通るって分かったんですか?

簡単な話だよ。救急車が、ここ再度山の麓のガソリンスタンドが行きつけの店で毎日給油しに走ってるってだけだよ

へぇ…そうなんd

言い終わらない内に、走一は背後からバールのようなもので殴られた。

どうした!?走一君!?

走一はそのまま地面に突っ伏したままだった。

「へっへっ…」

戦意をなくして走一の目の前にいた窃盗犯2人組が耳障りな笑い声を上げた。
走一の背後には救急車、その救急車からバールを持って現れたのは、紛れもなく救急隊員だったのだ。
健二と高木は理解が追いつかず、呆然としている。

「窃盗犯は2人じゃなかったんだぜ…」

なん…だって…!?

健二が驚いてる隙に、戦意をなくしたはずの窃盗犯2人組が健二に襲いかかる。

ぐあっ!!

健二君!!

健二まで地面に倒れ、残されたのは高木1人。
前には窃盗犯2人組。
後ろには窃盗犯の仲間の救急隊員が。
高木はジリジリと間合いを取るが、3対1では流石の高木でも太刀打ち出来るはずがなく。

…ひとつ、訊いていいか?

時間稼ぎをしても無駄だと分かり切ってるのに、高木はそれでも問う。

「何だよ。言ってみな」

何故、救急車を盗んだ?

「救急車ってな、高い値段で売れるからだよ」

ああ…金目当ての方だったか…

走一の言ったとおり、この窃盗犯達は金が目当てでこんな犯罪に手を染めたのだ。

走一君の…言ったとおり…ね

高木はつぶやくと、腹の底から笑った。
陽気に、朗らかに。

「何がおかしい!?」

いや、そりゃそうだろ。あんたら俺にばっかり注目してるけど…その間に気絶したふりした走一君が健二君と善良な救急隊員を救出しに向かったんだから

「!?」

気がついた時にはもう遅かった。
3対1で不利だったが、今では4対3に逆転している。
走一、健二、高木、そして善良な救急隊員は窃盗犯3人を囲む。
高木は余裕たっぷりの表情で言い放った。

お前ら3人、救急車窃盗未遂の現行犯、あと走一君達に対する傷害罪その他諸々で逮捕する!!

「ちょ、待てっ…!」

待てと言われて待つバカはいない。って、俺は警察学校時代に上官から教えられたんだがな

朗らかな微笑を浮かべながら高木は言った。
その直後、健二と走一、そして善良な救急隊員は窃盗犯を攻撃した。


兵庫県神戸市某所 午前0時8分

…助かったよ、走一君、健二君

高木はコンビニで買ってきた缶コーヒーを2人に手渡す。
走一と健二は素直に缶コーヒーを受け取ると、プルタブを開けた。
窃盗犯を捕まえ、事情聴取を終えた所であった。

高木さん、実はこれを狙ってたんでしょう?

走一はちびちびとコーヒーを飲みながら言う。

狙ってたってなんのことかなー?

高木は柔和な笑顔を浮かべたまま崩さない。
馬鹿のフリした策士。
警察時代からの高木のあだ名である。

いつから救急隊員もグルって分かってたんです?

んーちょっと俺はよく分からないなー

俺の計画には穴があるって分かってて利用したんですよね?

俺、馬鹿だからわかんなーい

いい加減、怒りますよ?

走一は高木の首根っこを引っ掴むと、グシャグシャと癖のある毛を掻き回す。
高木はやはり笑顔を崩さないまま、なすがままにされていた。
その横で。

高木さん、あの窃盗犯は何故…

健二は高木に訊こうとして。

釘を撒いたのかって?

高木は先回りして答える。

残念ながら、君らが期待しているような回答じゃなかったよ


【救急車窃盗事件 供述書より抜粋】

「何で俺達が釘を撒いたのかって?」

「簡単だよ、釘を撒いたらパンクするだろう?」

「そしたら怪しまれることなく救急車を停車させる事ができるからさ」

「え?何かの影響?そんなものねーよ」

「ただ、昔何処かの推理小説か何かでそんな話があったんだ。道路に釘を撒いて、タイヤをパンクさせて運転手が降りた所で、2人の男が自動車を盗む話をな」


END.
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