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HOME>100のお題その2

021:ワイン

Drift走り屋er 番外編

※この物語はフィクションです。
実在の事件・団体・個人は関係ありません。
また、地名などは限りなく兵庫県の某所ですが、ちょこっとフィクションをぶっ込んでます。
あんまり真に受けちゃ駄目よ。

【21:ワイン】

兵庫県神戸市の片田舎。
陽が沈み、一日が終わりゆく何でもない平日。
相良 走一(さがら そういち)は、眼鏡を外すと、ふぅと一息つく。

「相良さん、発注伝票はー?」

「ああ、これね」

問屋で働いてる走一は、事務員さんに発注伝票を手渡すと、んー!と大きく伸びをした。
今さっき、スーパーに卸す品の発注伝票を作成した所だ。
今日の業務はこれで終わりだ。

「お疲れーす」

走一はタイムカードを切って帰り支度を始める。
そこで、走一の机の電話が鳴る。

「…ったく、何だよ」

ぼやきつつ、電話を取る。
聞きたくない独特のダミ声が受話器から飛び出した。

「相良くんか!!」

「…てんちょ」

問屋の店長である。
いつもいつも仕事を引っ掻き回す事で有名。
でもなんだかんだ言って話は分かる人なのでどうにも憎めないのである。

「また何やらかしたんすか…」

「またってなんだよ!仕事終わって暇だろ?頼みたいことがあるんだ」

「お疲れーす、帰りますー」

「やめて!帰らんといて!!」

「なんスか、かまってちゃんスか…」

「実は大手のスーパーからさっき発注があってな、午後8時までにワインを工場から直接スーパーに届けて欲し」

「(∩゜д゜)アーアーきこえなーい」

「給料いらんのか?」

「ブラック問屋に勤めてるんだが俺はもう限界かもしれない」

「そう言わないで、ね!」

「誰のせいだと思ってんですか、てんちょ、いい加減にしろ」

「工場の住所とスーパーの住所は今から言うからメモしてくれ。伝票とかその辺はもう話を通してあるから」

「へいへい」

走一は左手でペンを握る。
店長から言われた住所を独特の字で書き連ねてゆく。

「ワインを工場からスーパーに配達すればいいんですね?」

「おう、午後8時までにな。間に合わなかったらウチの会社はもれなく赤字だ」

「………」

走一が硬直した。
脳味噌の中で地図と距離と時間が高速ではじき出される。

「え、ちょ、それ無理…」

「君ならやれる!!頼んだぞ!!」

ブツッ、ツー、ツー…

「OH!!Shit!!ヴァッファンクーロ!!」

似非外国人になりきると、走一は乱暴に受話器を置いた。
事務員さんは横で苦笑している。
帰り支度も適当に済ませ、走一は慌てて上着を引っ掴む。
携帯電話を取り出し、走一は友人の健二に電話を掛ける。

「あー、走一か?」

「健二、今大丈夫か!?」

「いや、仕事中。何か困ってるんなら多分高木さんが今日非番のはずだぞ」

「そうか、悪い。ありがとな」

通話を終わらす。
次に電話をかけたのは兵庫県警の高木。
過去に色々あったのだが、それはここでするべき話ではない。
兄のような父のような存在で、健二も走一も頼りにしている。

「もしもし!?高木さん!?」

「んー…どうした走一君。彼女でも出来たか?」

「今暇だったりします?」

「ああ、すっごい暇。非番ってこんな暇なんだな」

「高木さんの非番具合とか興味ないんで。率直に聞きますけど今何処かにいたりします?」

「今かい?あまりにも暇だからドライブがてら長田区の某鉄人28号を見」

「っし!!高木さん、ナイス!!工場の近くだ!!」

「工場?何の話だい?」

「いいですか、高木さん。近くに小さなワイン工場があるはずです。××ワイン工場っていうんですけど」

「ああ、あそこか」

「そこの守衛さんに相良 走一の名前を出して白ワインを2ケースと赤ワインを2ケースとロゼ1ケースを強奪…じゃなかった、伝票と一緒にワイン工場の門まで運んでおいて欲しいんです」

「え?何で?」

「午後8時までにあるスーパーに届けないとうちの会社が赤字なんです。善良な市民が困ってるんです」

「善良な市民て…今さらっと怖いこと言ったな君…間に合うのかい?」

「高木さんが居てもギリですね。責任重大ですね!」

「走一君!?」

「頼みましたよ、××ワイン工場の守衛さんに相良 走一の名前を出して白ワインを2ケースと赤ワインを2ケースとロゼ1ケースを伝票と一緒にワイン工場の門まで輸送ですからね!」

走一は言い切ると携帯電話の通話を切る。
慌てて愛車のミラジーノに飛び乗った。
ワイン工場まではいくら急いでも20分はかかる。
エンジンを掛け、シートベルトをつけながら、オーディオのボタンを押してラジオからMDに切り替える。
オーディオから流れるのは超ハイテンポなヘビメタ。

「男だね!背中で語れ!涙ァ!」

スキール音を響かせながら車を発進させる。

なお、この物語はフィクションです。
公道では交通ルールを守って安全に車を運転しましょう。


「心で泣いて笑顔見せるゥ!それが生き様男道ィ~」

ひよどり台の直線道路を一定速度でかっ飛ばす。
今日はひよどり台でスピード違反の取締はやってないことはネット上で確認済みだ。
車と車の間を縫うように走る。
昔取った杵柄…というか。
元暴走族の本領発揮である。
途中でトラックの運転手が目をひん剥いていたが、そんなもんお構いなしだ。

後に走一の走りを見たトラックの運転手は、
「ミラジーノが…軽自動車がロケットで突き抜けた」
と語っていたがそれはまた別の話。

「っしゃあ!!」

ものの10分ほどでワイン工場に到着した走一は時計を見る。
午後8時まであと20分。
ワイン工場の門には言われたとおり高木が待っていた。

「君は警察官を便利屋か何かと勘違いしてないかい?」

少々渋い顔をしていたが。

「そんなことより配達だ!!」

高木の言葉をぶった斬ってワインを割らないように走一の車に搬入。
スーパーまでは丁度17分ほどで到着するが、いかんせん積んでる品物はワイン、割れ物だ。
なるべく揺らさないように、丁寧に運転してスーパーまで運んでやらなければならない。
ましてや、今積んだワインは1本3000円以上する高級品。
振動や衝撃はもっての外。

「うああ!!間に合うんかこれェ!!?」

「走一君、あるスーパーにそのワインを届けるって言ってたけど、一体何処のスーパーだい?」

「◯◯スーパーだよ!とにかく、話は後で!!」

言うなり、走一は車を走らせて行ってしまった。
そんな走一を見えなくなるまで見送った後、高木はポツリと呟いた。

「◯◯スーパー?はて…いや、ひょっとして…もしかして…」

高木はゆっくりとした動作で携帯電話を取り出した。
電話を掛ける相手は…

BGM:「出前道一直線」/SEX MACHINEGUNSでしばらくお待ちください。

衝撃を与えないように走らせた。
揺らさないように頑張った。
故に、いくら運転技術がある走一といえどそれなりに時間がかかった。
日本標準時で午後8時3分。
スーパーの中は薄暗く、照明の電源は落ちていた。
相良走一は膝から崩れ落ちた。

「間に合わなかった…うあああ…」

走一は頭を掻きむしる。

「あきらめたらそこで試合終了だよ」

うなだれる走一にかかる声。
涙目の走一はそっと顔を上げた。
そこにいたのは、眼鏡で恰幅のいい白髪の安西先生ではなかった。
何処からどう見てもガードマンの制服姿の金髪眼鏡のチャラ男にしか見えなかった。
ていうか知り合い。
超知り合い。
近所の幼馴染級っていうか近所の幼馴染の腐れ縁。
たまに自分家来て勝手に飯食ってく。
図々しい、超図々しい。
でも憎めない。
いや、そもそも何でこいつがこんな所でいるんだ。

「健二!?」

「おう、元気?…とは言いがたいな」

なにこれ意味分かんない。
そもそもこいつ仕事とか言ってなかったけ?

「健二、仕事は?」

「いや、だから今まさに仕事中」

「え?」

いまいち脳味噌の処理が追いつかない。

「どゆこと?」

「さっき高木さんから電話あって状況を把握したんだけどさ。お前、午後8時までにこの◯◯スーパーにワイン届けなきゃなんないんだろ?」

「だからなんで健二がそこにいんの…」

「今日と明日の2日間だけ、この◯◯スーパー工事してんのよ。んで、俺は通行人に怪我がないようにガードマンしてる訳だ」

「なん…え、ちょ…?」

「高木さんから電話で状況を伝えられたから、◯◯スーパーの人に無理言って今待ってもらってんのよ。店閉めてもらうの」

工事はとっくに終わってる。
健二は仕事が終わって、スーパーの人に無理を言って閉店を待ってもらっていたのだ。

「あ!」

走一はそこで理解出来たらしく、慌てて車からワインを出して運ぶ。
スーパーの店内の照明の電源は落ちていたが、事務所の電気はまだ明々としていた。
スーパーの店員が缶コーヒーを飲みながら、走一の到着を待っているのが見える。

「これ運べばいいんだな?」

健二も走一に倣って手伝う。

「ありがと」

「礼は高木さんに言うこった。高木さんが俺に電話寄越さなかったらそのまま俺も帰ってたとこだ」

「あー、じゃ、今度飯食いに行こう」

「お前のおごりで?」

「…ラーメン屋でいいか?」

「大盛りな」

「ああ、それぐらいなら…」

「味玉も」

「…太るぞ?」

「ガードマンは冬の寒い日もずっとお外で仕事して脂肪を燃焼させているから太らないのだ」

健二は笑った。
ワインをスーパーの店員に検品してもらい、伝票と納品書を手渡す。
閉店したスーパーを後にし、走一は改めて健二の方を見た。

「そういや、お前の制服姿初めて見たかも…」

「カッコイイだろ?惚れんなよ?」

「ぬかせ、まだ制服に着られてんぞ」

走一は携帯電話を取り出し、店長に電話を掛ける。

「おお、走一君か」

「てんちょ、3分遅れたけど色々な要因が重なって何とか間に合いました」

「いやー、君なら出来ると思っていたよ!ご苦労さん!!」

「てんちょ、もう二度とこんな残業はしませんからね」

「はっは、まあそう言うなよ、ま」

ぴっ。

走一は電話を途中で切り、大きく溜息をつく。

「お疲れさん」

健二は笑った。
走一も笑った。

END.
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