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HOME>100のお題その1

010:ぬいぐるみ

俺は神様に願った。
少しの間だけでいい、俺を動けないぬいぐるみから動けるぬいぐるみにして欲しい…と。
神様は俺の願いを叶えてくれた。
ただし、動き回れるのは24時間だけだったけど。
でも、それで十分。
今はとにかく…助けなければ。

俺が彼女…ミカに初めて会ったのはミカが5歳の時。
緊張する俺に、ミカは笑顔で「可愛い!!」と抱き上げてくれた。
その笑顔をいつまでも見たいと思った。

それから5年の月日が経ち、ミカは10歳になった。
相変わらずミカは人懐こい笑顔で俺を癒してくれる。
優しく、暖かい手。
ずっとずっと、一緒にいたいと思った。
だけど、今日。
俺は2階のミカの部屋の窓から目撃してしまったのだ。
ミカが、何者かに連れ去られる所を。
誘拐…脅迫…身代金。
様々な言葉が浮かんでは消えていくが、俺にはどうしようもない。
だって、俺はぬいぐるみなんだから。
こうしてじっと見ているしか出来ない。
だって、俺は動けない。
ぬいぐるみなんだから。

「もどかしいのですね」

という声が聞こえる。

「あんた誰? …いや、この際誰でもいい。 俺の気持ちが分かるのか?」

「ええ、分かりますよ。 仮にも神様なんですから」

「だったら俺の願いを叶えてくれ! 俺はこの姿じゃ動けない。 だから、動けるようにして欲しいんだ!!」

「ふふ、分かりました。 あなたを24時間だけ動けるようにしてあげましょう」

「ありがたい!」

こうして俺は自由に動けるぬいぐるみになった訳だが。
何故だか周りの人間は青ざめた顔でガクガク震えている。
おびえている人間の襟首を引っ掴むと、俺は言った。

「ここで連れ去られたミカという10歳の女の子を探している。 連れ去った連中は車に乗ってどっちに向かった?」

「ひっ! あ、あっちです!! 黒い車に乗ってあっちに行きました!!」

「そうか、ありがとう」

俺は礼を言うと、人間離れした速さでミカを連れ去った車を追いかける。

「オラアアアアアアアアアア! ミカに何かしやがったらぶっころーーーーーーーーす!!!」

ミカを連れ去った車は港の倉庫に止まった。
俺は人間離れした力で車をこじ開けたが、中は空っぽ。
となると…

「ここかああああああああああああああ!!」

ガッシャーン!!
倉庫のドアを蹴破る。

「何だ貴様…うわあああ!!」

ミカを連れ去った連中は目を見開き驚く。
ガチガチと震え、おびえる者もいたがそんなのはお構いなしの問答無用だ。

「ミーカーをかーえーせぇええええええええええ!!」

俺は次々とミカを連れ去った男達を殴りつける。
ほぼ一発K.Oである。
残ったのは1人の男。

「お前が主犯かボケハゲコラァ!!」

「ひっ!!」

おびえる主犯(仮)。

「な、何だよ…なんで、何で…」

ずりずりと後ずさる主犯(仮)。
悲鳴のように言い放つ。

「何で『クマ』が喋ってるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」

「だまらっしゃーい!」

めこっ。
主犯(仮)はクマ(に見えるらしい)パンチでK.Oした。

ミカは無事。
擦り傷1つ付いていない。
ほっと安堵する俺にミカは言う。

「どうして私の名前を知ってるの? どうして助けてくれたの? どうして喋れるの? クマなの?」

「俺はクマじゃないよ。 いつも君が可愛がってるクマのぬいぐるみなんだ。 君が連れ去られるのを見てしまったから、神様にお願いして動けるようにしてもらったんだ。 でも、こうして動けるのは24時間だけで、つまり…」

「よく分からないけど…私を助けてくれたんだね。 ありがとう!」

いつもの人懐こい笑顔。
俺のこんな姿を見てもおびえたりしないミカが心から好きなんだと思った。
もうすぐ24時間が経過する。
俺はクマからぬいぐるみのクマに戻ってしまうけど、ミカが好きだという事だけはゆるぎない事実だよ。

END.
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