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HOME>100のお題その1

011:指輪

指輪には様々な意味が込められている。
一番代表的なものでは『婚約指輪』と言った所だろうか。

「これ…意味は、分かるよな?」

慎は黒い小さな箱を取り出してそっと開ける。
箱の中にはシンプルなプラチナリングが光っていた。

「慎…私できないよ」

優美はうつむき加減で首を横に振った。

「どうして!? 僕じゃ駄目なのか…?」

「違うの。 慎の気持ちはすごく嬉しい。 でも、私その指輪を付ける事が出来なくなったの」

「え…それってどういう」

「病気で入院してたって慎には言ってあったけど本当は違う。 私ね、通り魔の被害にあったの」

「通り魔…だって?」

「ええ、だけど命に別状はなかった。 こうしてまた慎と一緒にいられる。 それはとても嬉しいの」

「優美、まさか君は…」

「通り魔に盗られたものはね」

優美はそっと左手を机の上に差し出す。
小指と、薬指が歪に切り取られていた。

「婚約指輪…付けられなくなっちゃったよ…」

優美は静かに泣き始めた。
慎は呆然と無くなった優美の小指と薬指を見つめていたが、やがて意を決したように立ち上がる。

「優美、ちょっと待ってて」

「慎、何処行くの…?」

「これから優美に見せてあげるよ。 どれだけ僕が君を愛してるかって事を」

慎は言うなり、高層ビルのレストランから飛び出す。
タクシーを呼び止め、目的地を告げる。

「こんな時間に開いてませんよ!」

「開いてなくてもいい。 『開けるんだ』よ」

慎は微笑った。


慎が優美の元へ戻って来たのは、レストランが閉店する5分前だった。

「ただいま、優美」

汗だくで、ネクタイとワイシャツは緩み、髪の毛はボサボサ。

「慎!?」

「ごめんね、店を探し回って加工してもらってたらこんな時間になっちゃった」

慎は言うなり、黒い小さな箱を取り出した。
優美は恐る恐る箱を開ける。
そこにはハート型になったプラチナリングと、プラチナのチェーンがあった。
慎はチェーンにリングを通すと、優美の首にかけた。
婚約指輪を付けられないなら、ペンダントにしてしまおう。
慎は街中の宝石店を探し回り、東奔西走していたのだ。

「優美、きっとコレなら大丈夫。 通り魔に指を盗られたって、僕らの愛は誰にも奪われたりしない。 改めて言うよ、結婚しよう」

「慎…ありがとう!!」

優美の首に、小さな婚約指輪が光った。

END.
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