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HOME>100のお題その2

024:軌跡


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「One Way Train」/m.o.v.e. ※一部抜粋

不可逆の軌道上 果てなく続く道
片道キップしか持たない僕らは
行けるまで走るだけ この空へ
どんだけ遠くに飛ばせば 届く? One Way Train

不可逆の軌道上 果てなく続く道
片道キップしか持たない僕らは
行けるまで走るだけ この空へ その果てまで
どんだけ遠くに飛ばせば どんだけ強く叫んだら
届く? One Way Train

そして軌道の上 We are on the one way train
帰りのキップ貰うのは死んでからだ どうせ
最高な日も サイテーな日も 車輪(ちきゅう)はキッチリ
等しく一周するんだぜ
Train train, one way train, going down
そんならドンチャン騒ぎながら旅つづけよう
Train train, one way train, going down
光る目の車掌が発射オーライ

不可逆の軌道上 果てなく続く道
片道キップしか持たない僕らは
行けるまで走るだけ この空へ
どんだけ遠くに飛ばせば 届く? One Way Train例えば。
奇跡を紡いでいって積み重ねていったとして。
それ(奇跡)はもはや奇跡と呼べるのだろうか?
当たり前のように何度も何度も奇跡は起こせるものだろうか?
否、それはもはや奇跡ではなく―――――軌跡。


Drift走り屋er 番外? 哀川 明(あいかわ あきら)編
「Re>>Drift走り屋er」

俺の名前は哀川明(あいかわあきら)。
突然だが俺の名前を覚えている人は一体どの位いるだろうか?
まあ、殆どと言っていいほど覚えている人は居ないのだろう。
まあ、覚えていても覚えていなくてもそんなに影響はない。
ただのヘタッピ走り屋だ。
さて。
タイヤ屋の店員をやっている俺だが、閉店後いつものようにシャッターを下ろして帰ろうとした途中。
その日はどうもいつもとは様子が違った。
ごそごそ。
誰かがいる気配がした。
作業場の方からその音が聞こえた。

「何やってんだ」

持っていた小型LSDマグライトを作業場に向けたら2人組の泥棒がいた。
タイヤ泥棒。
作業場には極力使用済みタイヤ以外は置かないようにしているのだが、仕事終わりにそろそろ自分のタイヤを衣替えするために置いていたものだ。
泥棒達は軽自動車用のスポーツタイヤを小脇に抱え、今まさに逃走しようとしていた所。
咄嗟の事なので思考が停止した。
その間、タイヤ泥棒2人組は手際よく車にタイヤを積み込んだかと思ったらすぐに遁走。

「ちょま、待てぇぇぇ!!」

50mほど走った所でようやく思考が追いついた。
相手は車だ。
自分の車を取りに戻ると相手を逃してしまうし…
辺りを見回すとある1台の軽自動車が目に止まった。
考えている時間はない。

「おいっ、走り屋の兄ちゃん達! 突然で悪いが、前の車を追ってくれ!」

言うなり、後部座席に乗り込んだ。
軽自動車の運転手は茶髪の大人しそうな青年だった。
多分俺と同じくらいの年齢の。

「おいおい、何勝手に乗ってんだよ。 俺の車はタクシーじゃないぞ」

案の定顔をしかめて不満を漏らしたが、そんなことで押し問答しているヒマなどない。

「頼む!」

土下座線ばかりの勢いで頼み込んだ。
茶髪の大人しそうな青年はしばらく俺の顔を見つめた後、

「シンジ、助手席に乗れ。 行くぞ」

と車外でゆっくり煙草をふかしていた白髪の青年に声を掛けた。

「おいおい、こいつの言う事を聞くのか?」

白髪の青年…もといシンジは疑惑の目で俺を見つめていた。
そりゃ、そうだろう。
誰だって疑う。
俺だって疑う。

「……………」

白髪の青年シンジは渋々助手席に乗り込んだ。

「で、お客さん。 どちらまで?」

茶髪の大人しそうな青年は何処か楽しそうな笑顔を浮かべながら俺に訊いてきた。
そんなもん、タイヤ泥棒2人組に言ってくれよ。

†††

「突然無礼な事をして、済まなかった。 実は言うと、盗難に遭ってね…」

とりあえずタイヤ泥棒の車を目で追いながら状況を説明しようと呟いた。

「そりゃ災難だな。 一体何を盗られたんだ?」

茶髪の青年は丁寧な運転で指示された通りにタイヤ泥棒の車を追ってくれている。

「タイヤ。 しかも、スポーツタイヤだ」

「へぇ、って事は君も走り屋かい?」

「下手の横好きだよ。 で、今タイヤを盗んだ犯人を追いかけてるって訳さ」

「なるほど、そういう事か。 じゃぁ、遠慮はいらないな」

茶髪の青年は人懐っこそうにほくそ笑んだ。
タイヤ泥棒2人組が乗り込んだ車は再度山へと入っていく。
俺も運転席にいる茶髪の青年に道を指差しながら再度山へと入っていくように頼んだ。

「今、犯人は再度山へ入った。 シンジ、何故だと思う?」

「知らね」

茶髪の青年は助手席にいる白髪の…シンジとか言う青年に突然そんな質問をした。
白髪の青年シンジは知らないと即答した。
すごい無関心っぷりだ。

「…シンジ、もうちょい頭を使った方がいい。 いいかい、犯人が再度山に入ったのは、俺らを撒く為さ」

「だったら普通、車の多い所に逃げ込むと思うんだけど」

「阿呆。 俺らは地元民だから、この辺りの抜け道には詳しい。 車の多い所なんかに逃げれば、すぐに俺らに捕まっちまうよ。 そう考えた犯人は、普段走りなれない山道、それも再度山へと逃げたんだ」

「おぉ、なるほど」

「だけど、ちょいと計算違いだったようだぜ。 俺はこう見えても・・・」

「『再度山最速の走り屋なんだぜ』だろ? 聞き飽きたぜ」

何だか2人はすごく仲が良さそうだった。
きっとこのあたりの走り屋なのだろう。
白髪の青年シンジは茶髪の青年の言葉を遮って言う。

「シンジ、俺のセリフ取るなよ!」

大人しそうな茶髪の青年は白髪の…シンジの後ろ頭をはたいた。
オーディオからはさっきからずっと軽快な音楽が流れている。
何の音楽は知らないが、どこかハイスピードでアップテンポな曲だった。

「OH-I NEVER CAN GET ENOUGH OH-THIS NEED FOR SPEED INSIDE MY BRAIN♪」

期限がよさそうに音楽を口ずさみながら、ハイスピードでドリフトしていく茶髪の青年の車。
大人しそうな見かけによらず、運転は完全に法定速度をぶっちぎっている。
…というか正直怖い。
白髪の…シンジと、俺はもはや悲鳴を上げている。
たまりかねて白髪の…シンジは

「ちょ、走二。 スピード出しすぎ!」

と注意を促した。
大人しそうな茶髪の青年の名前はどうやら「そうじ」というらしい。
漢字はどう書くのかは知らないが。

「んー?」

何のことか思い当たるフシがない、といった感じで生返事をする茶髪…そうじ。

「怖ぇよ! スピード出し過ぎだってば!」

悲鳴に近い声で白髪…シンジはそうじに話しかける。

「加減してるんだけどな」

あっさりと言い切った。
加減してるとか絶対嘘だ。

「マジかよ…」

「ほら、追いついたぜ。 どうする?」

ふと、思い出したようにそうじは後部座席の俺に声を掛ける。

「つっ、捕まえてくれ!」

恐怖で思わず声が裏返った。
当初の目的はスピードとともにおっことしそうになったが、俺はタイヤ泥棒を捕まえに来てるんだった。

「了~解!」

茶髪の青年そうじは笑った。
そこから更に車は加速する。
オーディオからはアップテンポな曲が続いている。
見た目とは裏腹にかなりやんちゃな性格をしているのかもしれない。

しばらく茶髪の青年…そうじは歌を口ずさんでいた。
洋楽みたいで意味はわからなかったが。

【Chances thrown Nothing's free Longing for what used to be Still it's hard Hard to see
Fragile lives, shattered dreams】

「いいかい、シンジ。 今、犯人はかなり慌てている筈だ」

茶髪のそうじはつかず離れず犯人の車について行きながら様子を見ている。

「どうして分かるんだ?」

「挙動が不安定になっているからさ」

「挙動?」

「人間が車を運転する限り、必ず運転手の性格や思考が見えてくる。 よく観察すると、犯人の車は・・・」

キャキャキャァァァアア!

「カーブで外側に膨らんでいる。 つまり、動揺して挙動が不安定になっている証拠さ」

「ふーん、動揺ねぇ・・・」

「恐らく犯人にとっては予想外だろうね。 『まさか、追いついて来るなんて思っていなかった』と驚いている頃だろうな。 そこで・・・」

茶髪の青年そうじは思い切りアクセルを踏んで、犯人の車を追い越すと、Uターンした。

キキャァァァアア!

犯人の車は急ブレーキを踏んで停止した。

「先回りしてやると、思考が停止する。 さて、タイヤを盗まれた青年よ、死なない程度に懲らしめてやりなさい。 俺も加勢するから」

茶髪の青年そうじはニタァァと笑った。

「ありがとう」

俺もニタァァと笑った。
しばらくして。
タイヤ泥棒の2人組は見事にボッコボコにされ、タイヤは無事に俺の元に返された。

「本当にありがとう!」

俺は茶髪のそうじと白髪のシンジの2人に頭を下げる。

「いや、なかなか楽しい鬼ごっこだったよ」

茶髪の青年そうじはニコニコ笑った。

「そういえば、あんたの名前聞いてなかったな。 アンタ、名前は?」

白髪のシンジは俺に尋ねる。

「そういえばそうだった。 俺、哀川 明(あいかわ あきら)って言うんだ」

俺は自分の名前を名乗る。

「俺は春日 シンジ」

白髪の青年シンジも自分の名前を名乗る。

「走り屋、相良 走二。 20歳独身です!」

茶髪の青年、そうじも元気よく自己紹介する。

「じゃあ、またいつか会いましょう」

俺は2人に手を振った。

「おぉ、いつか再度山でバトルでもしようなー!」

そうじも大きく手を振った。
そうじ青年はきっちりと元の場所まで送ってくれた。
その帰りである。
俺は裏六甲山で走り屋達を見学していた。
プロ級の腕からアマチュアまで。
実に様々な人々がドリフトをしていた。
元々はそんな世界に憧れてタイヤ屋の店員をする傍ら、走り屋を続けてきた。
どこからか声が聞こえてきた。

「すっごいねぇ…」

珍しく女性の声だった。
ふとどんな顔をしているのだろうかと顔を向けてみると。
正直、一目惚れだ。
特別美しいとか、可愛いとかそういうのではないけれど。
でも彼女はある1人の走り屋に夢中だった。

「あの人、高木ヒロユキっていって、このあたりじゃそこそこ有名な走り屋なんですって」

彼女は高木とかいう走り屋の方に視線を向けて笑っている。

「憧れちゃうなぁ…」

駄目だ、アレは完全に恋している目だ。
俺なんかに勝ち目はない。
その高木という走り屋の男は非の打ち所がないほどのイケメンだった。
ゆるく癖毛の赤毛に、細身の銀縁メガネ。
そして、低音の渋い声に柔らかい笑顔。
彼女は高木とかいういけ好かない走り屋に駆け寄って一言二言会話を交わすと、俺の立っている方へと歩き出した。
彼女は高木の車を興味深そうにじっと見つめている。

「で、君は彼女に恋をしたわけかい?」

「うおっ!?」

一瞬、その言葉は誰に向けられたのか理解が及ばなかった。
びっくりして顔を向けるとそのイケメン高木は変わらぬ爽やかスマイルを俺に向けている。
やめろ、こっち見んな。

「話くらいは聞くよ?」

「うっせ」

「俺の名前は高木ヒロユキって言うけど何か質問ある?」

「ねぇよ、不愉快だ失せろ」

だいたい初対面から何だコイツ。
エスパーか。

「いや、実は俺も困ってるんだよ」

「女にか。けっ、流石イケメン様ですね」

「君俺のこと嫌いだろ」

「そこまで知ってるなら寄るな」

「彼女、俺に色々猛烈なアタックしてくるけど…既婚者だし困っているんだ」

「既婚者…?」

「そ。まあ、妻は交通事故で死んだけどね。一応子持ちだし、再婚とかそういうのはもう嫌なんだよ」

聖者かキリストか何かかコイツ。
世の中には子持ちでも再婚している人間なんぞごまんといるのに。

「世の中には子持ちでも再婚している人間は山ほどいるとか思ってない?残念ながら俺は1人の女性以外愛せない体質らしいんだよ」

何だこのイケメン。
後光が差してやがる。
うおっまぶしっ。

「と、言うわけで世の中助け合いの精神が大切だ。君は今から頑張ってあの女性を彼女としてゲットしてこい。そしてそのまま結婚して幸せな家庭を築いてこい。そうすれば世の中はもう少し上手く事が運ぶというものだろう?」

「何で初対面のイケメンにそんな事言われなきゃならんのだ」

「俺も協力するから」

「だが断る」

「君に拒否権はない」

何だこの性格悪いのか良いのか分からないイケメンは。
そろそろイケメンイケメン連呼しすぎてゲシュタルト崩壊してきた。

「俺、高木ヒロユキ。今から悪役演じて恋のキューピッドするけど何か質問ある?」

「やかましい」

「君に拒否権はないと言ったろう?」

言うや否や、赤毛のイケメンはいきなり俺の胸ぐらをひっつかんで大声で怒鳴りだした。
ヤンキーもかくや、というほどハマリ役な顔で俺を吊り上げると

「あ!?お前ふざけんじゃねーぞォ!?ぐらぁ!!」

と掴んだ胸ぐらをユッサユサ。
やめてくれ、恥ずかしい。
マリア様どころが彼女も不安そうにこっち見てる。
何事かとギャラリーが集まりだした。

「俺より速い走り屋はごまんといるだァ!?おま、マジっざっけんなよォ!?」

そろそろ苦しいから離してくれませんかね、胸ぐら。

「おおっし、そこまで言うなら男同士走り屋らしく走りの勝負といこうじゃねぇか!!」

何も言ってない。
ていうかアンタ声も渋けりゃ演技も上手いな。
俳優か何かやってたのか?
高木とかいう赤毛のイケメンは

「おらっ、どけっ!」

と言いながらわざとらしく彼女を突き飛ばすと、赤い普通車に乗り込む。
その光景を見て俺は思わず彼女が転ばないように支える。

「え、あ、だ…大丈夫…すか?」

駄目だ、可愛くて直視してられない。
彼女は何処かむっとしたように高木を睨んでから、俺を見る。

「え…と。何か、俺のせいで…すいません。俺、哀川。哀川 明(あいかわ あきら)って言います」

とりあえず謝っておいた。

「高木さん、あたしのこと嫌いなのかなぁ…」

「俺は好きです、けど…ね」

小声で呟く。
彼女には聞こえなかったようで、「え、何?」といったように首を傾げている。
その姿がまたクッソ可愛い。

「そもそも何故こんなことになったのかは分からんが、いっちょやってやるか…」

踊る阿呆に見る阿呆。
同じ阿呆なら踊らにゃ損って言うわけで。
俺はそっと彼女の手を握って自分の車を指さした。

「あの、俺の車で良かったら…その…」

「え?」

「あの…で、出来ればでいいけれども…その…」

「聞こえないんですけど?」

彼女は何かを期待しているようだった。
声が小さいと駄目出しされて、俺はもう吹 っ 切 れ た。

「俺の車の助手席に乗ってくれませんか!?出来ればこの先ずっと!!俺の彼女に!!なってくれませんか!!」

90度のお辞儀をしながら右手を差し出す。
周りのギャラリーがヒューヒューと囃し立てる。
お前らうるせぇよ、帰れ。
むしろ俺が家まで帰りたい。
俺多分、今顔真っ赤だ。
なんだよこれ、最高に黒歴史だ。
数秒の時が流れて。
右手は握られることはなかった。
が、頭に何か感触があった。
恐る恐る顔を上げると少し意地悪そうな顔で、彼女は俺の頭をポンポンと叩いていた。
そして、一言。

「いいわよ、もしもアナタが高木さんに勝ったら、ね」

†††

そもそも今日は色々災難に巻き込まれる日だ。
タイヤ泥棒に一目惚れに走り屋バトルに。
一体何フラグが立ったんだよ。
そんなにザバンザバン立つんならちょっとはクララに分けてやれよ。
高木とか言うイケメン(悪役)はイケメンな顔をガッツリ崩して中指を突き立てている。
一体何なんだお前は何を企んでいるんだ。
横には一目惚れした気になる彼女の姿。
俺が勝つなんて微塵も思っちゃいないんだろう、彼女はやはり高木の方に熱視線を送っている。
やめとけ、あいつ既婚者だぞ。

「不本意ながらスターターは清水がやらせて頂きます!」

誰だよ、清水って。

「しみっちゃんは俺の下僕」

高木はいい顔で宣言しやがった。
せめて執事と言ってやれよ。

「ルールは簡単、よーいどんでスタートして山頂でUターン、この自販機のある場所まで帰ってきて先にゴールしたら勝ちという方向で」

清水…しみっちゃんという男はざっくりとルール説明すると、高木と何やらゴニョゴニョ言ってる。
何考えてんだこいつら。
走り屋には頭のネジが吹っ飛んだ人が多いと聞くがこれほどなのか?
高木は赤い色の普通車(確かスープラっていうんだっけか)のエンジンを適度に吹かしてニヨニヨ笑ってやがる。
それなりに手を入れて改造してあるのは一目で分かる。
そして俺はと言うと。

「うわー…勝ち目なさそうだな…」

ライトチューン仕様の古い軽自動車。
シャレードデトマソ。
もはや今の時代では化石とまで言われるほど古い車である。
まあなんでそんな車に乗っているかというと。

「先輩の車なんだよな、これ…」

先輩が走り屋を引退した時に譲ってもらったシャレードデトマソ。
年々パーツが減りゆく中、それでも部品を取り替えたりして乗ってきた。
先輩は俺の中での生きる伝説だから。

「まあ、先輩の顔に泥塗るわけには…いかないよなぁ…」

元々ダウナー系の性格だが、徐々に自分を奮い立たせてテンションを上げていく。
横に並ぶ高木とかいうイケメンはやっぱりイケメンな顔をガッツリ崩して中指を突き立てている。
半分ヤケ気味になって俺も高木に声をかける。

「2秒でチギってやるよ」

高木(イケメン)の車と俺の車の間に清水とかいう男が立つと、ギャラリーにも聞こえるように

「カウントいきまーす!!」

と声を張り上げた。
それに呼応するようにアクセルを無駄に吹かす赤毛の(イケ)メン。

「5!」

サイドブレーキを下ろしてスタートの構えを取る。

「4!」

ギャラリーの声も心なしか静になる。

「3!」

横の彼女は何処か不安そうに俺を見ている。
そんなに見ないでくれ、俺に自信なんてものはない。
ハッタリか虚勢か強がりか見栄だ。

「2!」

カウント、長いな。

「1!!」

スッと息を吸う。

「Go!!」

爆音。
爆音ファイターの俺と赤毛のイケメン高木は夜の闇を裂くように走り抜けていく。
そういえば、オーディオはラジオのままだった。
いつの間にやら軽快なトークを繰り出すDJは大人しくなって、流れるのはアーティストも曲名も知らないハイテンポな曲を刻んでいた。

【「TRUST IN YOU」/THE OFFSPRING】
君の助けを断ったのは俺だ
君の伸ばした手が 俺の逆鱗に触れた
俺は頑なに拒絶した
今日を恨む俺に明日はない

プライドが高すぎて頭を下げることができない
頑固過ぎて努力をすることもできない
君を正面から見つめる
そして君の目にツバを吐き付ける

でも俺は本質を見つけ出してやる
そして見せてやる 俺の強さを

君を信じること 君を信じること 君を信じること
俺を引き上げてくれ
どうやって?闇から光へ
どうやって?闇から光へ
どうやって?引き上げてくれ
俺を引き上げてくれ
準備はできているから…

君だけを責めているのは俺だ
目の中で怒りが燃えて視界が暗くなってきた
ひとり彷徨っているのは俺だ
心の闇が君の輝きを遮る

誰だ 俺を追い詰めたのは?
俺は進みたいんだ
俺は希望が欲しいんだ

だから俺は変わるつもりだ
やってみるさ
見せてやる俺の強さを

君を信じること 君を信じること 君を信じること
俺を引き上げてくれ
どうやって?闇から光へ
どうやって?闇から光へ
どうやって?引き上げてくれ
俺を引き上げてくれ
準備はできているから…

先行したのは案の定赤毛のアn…イケメンで、俺は残念ながら後ろを走る羽目になってしまった。
噂では速いと聞いていたが、追いつけない速度じゃない。
…と、いうよりも。
裏六甲みたいなテクニカルな道では普通車はパワーを持て余してしまうんじゃないか?
その証拠に、高木とかいうイケメンは車を運転しているというより、車に振り回されている。
あ、今カーブで外に膨らんだ。

「…もしかして、後ろにぴったり付かれるとペースを崩すから後行タイプなのか?」

隣の彼女は怖がる様子もなく、楽しそうだ。
腕を突き上げてはしゃいでいる。
怖がられるよりかはいい。

「弱点は見えたし…問題はどのポイントで抜き去るか…だよなぁ…」

安全にあの普通車を抜き去るには何処がいいか?
そんなことを思案していると、隣の彼女はへの字口で言った。

「つまんない。そんなの考えてる間にガーって抜き去ってよ」

「あのな…」

俺は呆れながら横目で彼女を見る。

「言われなくても…わかってらぁ!!」

もうすぐゴール地点だしね。
考えている暇なんてなかった。
アクセルを床まで踏み倒すとビリビリと車が震えた。
車が古いのは知ってる。
だけど。
頼むから、もうちょい頑張ってくれよ…

†††

「完敗だよ」

赤毛のイケメン高木はフッと笑って右手を差し出した。

「俺の瞳にか?」

「言ってないし字が違う」

高木は朗らかに笑う。
彼女は機嫌良さそうに俺の隣にいる。

「ま、これで2人は晴れてカップルって訳だね」

「でもあたし…!」

彼女は高木に向かってすがりつく。

「こんな事いうのもアレなんだけど。俺さ、既婚者だし君みたいなタイプ苦手なんだよね」

高木はここでネタばらし。
完全に悪役を突っ走ってやがる。

「うん、この際だしはっきり言っておくよ。迷惑だからつきまとうのはやめてくれ」

隣の彼女は泣いている。
そりゃ、そうだろう。
あのイケメンにそこまで言われるんだから。
なんか、腹立ってきた。

「そこまで言うことないだろ?」

「そこまで言わないと分からないだろう?」

ああ言えばこう言う。
俺やっぱりこのイケメン嫌いだわ。

「あとついでだからトドメさしておくよ?俺実はホm」

あーあーあー聞かなかった。
俺は何も聞かなかった。
こっちの方が恥ずかしくなって、無言で彼女の手を握った。
そのまま小脇に抱えて俺の車の助手席に乗せると、泣いてる彼女に黙ってハンカチ差し出した。

「あのさ、俺はあんた好きだぜ。だからさ、もうちょっと俺の方も見てくれないかな?」

と言い残すと再び赤毛のイケメンの元へ。
ギャラリーの視線が痛い。
なんだこれ。
史上稀に見る黒歴史だ。
歴史は黒いが顔は赤い。

「そういうわけで、色々ありがとね~」

高木はヒラヒラと手を振って立ち去ろうとする。
逃がしてたまるか。

「俺アンタのことだいっきらいだ!!」

叫ぶなり、渾身の黄金パンチをお見舞いしてやった。
高木は抵抗らしい抵抗はせず、俺のへなちょこパンチでも吹っ飛んだ。

「はっはっはっ。知ってる」

殴られた箇所を押さえながら、朗らかに笑う。

「お人好しにも限度があらァ。誰が走り屋バトルで手加減しろっつったよ」

「はっはっはっ。バレた?」

「…さんきゅ。でももう二度と会うことはないだろうね」

「出来ればねー。あ、そうそう。俺、高木ヒロユキって言うんだけど何か質問ある?」

例えば。
奇跡を紡いで積み重ねていったとして。
それ(奇跡)はもはや奇跡と呼べるのだろうか?
当たり前のように何度も何度も奇跡は起こせるものだろうか?
否、それはもはや奇跡ではなく。

――――――――――――砂の上には軌跡が描かれていた。
Best wishes of happiness never be away from both of you.
(幸せが二人から絶対に去っていくことがありませんように)


END.
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