029:メモ
※この物語はフィクションです。
【029:メモ】
一週間前、数年連れ添った旦那が死んだ。
流行りの過労死っていう奴だった。
当たり前だ。
日曜日だろうが夜中だろうがひっきりなしに電話で呼び出された。
アタシは「そんな会社絶対おかしいよ、転職したほうがいいよ」って言ったのに。
それでも旦那は笑って「仕事なんだ」って言って会社へ行くんだ。
共働きして手に入れた一戸建ての住宅も、今となっては意味が無い。
なんだよ、それ。
旦那の遺品を整理しながら、アタシは溜息をつく。
2人で新婚旅行にいった時のアルバムを開く。
ぱさっ…
「え?」
アルバムから落ちた1枚のメモ用紙。
拾い上げてみると、上手とは言えない旦那の角ばった字が踊っていた。
【月が綺麗ですね】
「愛」という言葉を極端に嫌う、旦那なりの「愛してる」がそこにいた。
END.
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