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ソルティドッグ・プリティガール



ウォッカ20ml
グレープフルーツ・ジュース40ml
食塩少々
レモンの輪切り


オールド・ファッションド・グラスの縁をレモンで濡らして食塩をつけ、スノースタイルにする。
そのグラスに氷を入れ、ウォッカ、グレープフルーツ・ジュースを注ぎ、ステアして完成。

220px-Salty_Dog.jpg




薄暗い照明のそのバーは、開店時間と閉店時間の概念がない。
そして、定休日という概念も。
いつ開店しているか、いつ閉店するのか誰も知らないそのバーには、今日も客の数は片手で数えられるほどしか存在していない。

Bar「神風」

今日もマスターは黙ってグラスを磨き続けている。
そんな中、女は黙ってロックグラスを傾けていた。

「いかがですか」

無口なマスターはチラとその女を見つめて静かに微笑する。

「辛いわね…」

「そうですか。まあ、ソルティ・ドッグとはそういうものですから」

「そうね…」

マスターはその女の一言で関西出身だと見抜いていた。
『塩辛い』事を『辛い』と言うのは関西圏の人間なのである。

「バーは初めてですか?」

「ええ…」

「バーは雰囲気を楽しむもので、バーテンダーは客の鏡っていう言葉をご存知ですか?」

「客の鏡…?」

「今日僕がこの『ソルティ・ドッグ』を出したのはあなたの心の機微を反映して出したもの、ということです」

「そう…」

普段無口なマスターはこの日はよく喋っていた。

「グラスの形・量・色・ベースの酒の種類・使用するフルーツに至るまで、客の…相手の表情を見ながら出すんです」

「じゃあ何で私に『ソルティードッグ』を出したのかしら?」

「語呂が良かったからです」

「語呂?」

「ソルティードッグ・プリティガール…大丈夫、失恋しても貴女は十分魅力的ですよ」

マスターは全て見抜いている。
その日彼女は初めて笑顔を見せたのだった。
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