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031:静か


Drift走り屋er 番外高木ヒロユキ編 静かの海

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【031:静か】


騒々しい事故の処理が終わり、一息ついた兵庫県警の警察官が1人。
彼の名前は高木。高木ヒロユキ。
彼はひょんなことからある冬の日に最愛の妻を交通事故で亡くしている。
「君の妻が交通事故に遭ったので、仕事をほっぽり出してでも病院へいけ。命令だ」という上司に対し、高木は「勤務中だから勤務がきちっと終わるまで病院へは行けない」と断固として病院へ行かなかった。
結果、高木は妻の死に目に立ち会えなかった。
高木の妻の死から半年が経ち、うだるような暑さの夏がやってきてやがて終わろうとしていた。
そんな、ある日の夕方。

「高木、じゃあ後は片付けを頼む。終わったら乗ってきたカブ(バイク)で交番戻ってこいよ」

上司の早志は汗を拭いながら高木に言う。

「うっすー」

「暑いから熱中症に気をつけろよ。何ならゆっくり茶店で茶でも飲んでこい」

「自販で十分ですし警察官の制服のままじゃちょっとヤバイでしょw」

「お前はそれぐらい言わないとあれだからな。ガッチガチのクソ真面目クンだし。じゃ、頼んだぞ」

「ひでぇwww了解っすー」

軽いノリで返事をしながら、黙々と事故で散らばったガラス片を掃除してゆく高木。
手際よくガラス片を箒で掃き終わり、高木はクルクルと箒をぶん回してカブ(バイク)の横に括り付けて収納する。
上司の言葉に甘えて自販機で缶コーヒーを買うと、「ふぅ…」と地べたに座り込んだ。
太陽が沈み始め、穏やかな風がどこからかそよそよと吹いてくる。
見上げると、空と雲と電柱が自分を見下ろしている。
駅の近くだというのに珍しく人通りが皆無でとても静かだった。
海のような空の色。
心地良い静寂。
静かの海。

「やがて冬が来て、また冬が来るんだな…」

妻の香織が死んだあの冬の日がまたやってくる。


夕日が沈んで、あとに残されたのは煌々と光る丸い満月。
その月の表面にある静かの海。
北緯8.5度 東経31.4度。
月で餅つきをしているウサギに海を見立てた場合、ウサギの顔に相当する。
アポロ11号の月着陸船が着陸した場所でもある。
静かの海がただそこにあった。


END.
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