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【008:人が人でなくなる瞬間】




【008:人が人でなくなる瞬間】

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高速道路を疾走っていた。
真っ直ぐに伸びているコンクリートを見つめる。
今、俺の横には刃物を持った男が座っている。
そもそも、俺は一人で週末のドライブをしていた筈だ。
くそっ、何で俺がこんな目に…
内心毒づきながら、アクセルを踏み続ける。
助手席に座る男はナイフをちらつかせながら、ブツブツと何かを呟く。

「る。死んでやる…」

俺はその言葉を聞いた瞬間、『死ぬなら一人で勝手に死んでくれ』と思ったが、口には出さなかった。
言えば確実に殺されるからだ。

「もっとスピードを出せ!」

「勘弁してくれぇ…」

「死にたいのか?!」

「チッ、分かったよ」

俺は渋々アクセルを踏み込む。
こうして気違い男と地獄のドライブを始めて2時間は経過している。
そもそも、何で俺がこんな事をしているんだ?

「もっとだ。もっとスピードを出せぇっ!」

何で俺がこんな奴の言う事を聞かなければならないんだ?
募る不安と疲れと苛々。

「死にてぇのか!」

男は開いている窓から身を乗り出す。
キレた。

「るせぇ。死ぬなら勝手に死んでくれ」

俺は一番左に車線変更すると、車を左の壁にぶつけた。
生暖かい血しぶきか俺の左半分に降りかかった。
そうさこれは正当防衛。
すぐに警察に駆け込み、男にナイフをつきつけられ、驚いてハンドル操作を誤り、車をぶつけた。その時丁度男が車の窓から身を乗り出していたと言えば疑われる事はない。
完全犯罪の出来上がりだ。

「果たしてそれは成功するのかね?」

驚いて振り向く。
誰も居ない筈の後部座席には、黒服の男がいた。

「余所見をしていると…」

男が言い終わらない内に、轟音が響く。

「事故ってしまうよ?」

男の声が頭の中に微かに聞こえた。
それきり意識は戻る事は無かった。
……。

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END.
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