【009:Cross.A】
【009:Cross.A】
切れた。
鎖が、切れた。
その後すぐに、僕の意識は飛んだんだ…
「その言葉だけじゃ意味が分からないね。僕はね、君の口から真実を聞きたいのだよ」
僕の目の前に立つ、特攻服姿の奇妙な男は落ち着いた笑みを浮かべながら、優しい口調で言った。
「うん、自分でも意味が分からないと思う。だって、僕にも理解不能なんだ。僕はただ、愛しい彼女を迎えに行くために新神戸駅に行っただけなのに」
僕はひとしきりうめくと、その場で膝をつく。
「落ち着いて。情況を分かりやすく話しよう」
黒特攻服の死神は、天使のような笑顔を浮かべた。
「君は、3年振りに海外から帰ってきた婚約者を迎えに、新神戸駅まで向かった。そうだね?」
「あぁ、慌てて用意して、自分の車に飛び乗ったよ。道路では時速120kmでブッ飛ばしたよ」
「それで?」
「駅に着いて、車を有料駐車場に止めた。車を降りた時、ふと空を見上げた。月がとても綺麗だったのを覚えているよ。満月だった」
「うん」
「エスカレーターで上に上がり、彼女を探した。彼女は丁度、新幹線から降りて改札を通る所だった」
「それから?」
「彼女はにっこり笑って僕に手を振ってから…」
僕は、沈黙した。

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