こめくら めくら
欲は出しちゃいけないよ、という教訓的なおはなし。
分からない所があったらググって(ネットで調べて)ね。

でんでん太鼓↑
でんでん太鼓
日本の民芸玩具。
棒状の持ち手がついた小さな太鼓の両側に紐があり、その先には玉が結びつけてある。
持ち手を高速で回転させることにより、玉が太鼓の膜に当たり、音を立てるという子供の玩具である。
【こめくら めくら(作者不詳)】
昔、兵庫県のあるところに爺と婆が暮らしていた。
ある春の雨降りの日、爺が簑笠つけて畑を掘り起こしていたら、誰かが上の方から呼ぶ声が聞こえてきた。
「おい、爺、これ爺」
呼ばれた爺はきょろきょろ周囲を見回してみたら、畑の脇の木の枝に天狗が止まっていた。
「天狗様ですか。何のご用ですか?」
と爺が訊くと、天狗は
「爺が着ている簑と笠をくれんか」
と言うじゃありませんか。
「へえっ、この簑と笠でございますか」
「そうじゃ」
「へえ。でも…」
爺は蓑と笠を渡すのを渋りました。
そこで天狗は提案します。
「タダとは言わん。このデンデン太鼓を爺にやる」
「へえっ、デンデン太鼓でござえますか」
「そうじゃ」
「子供のオモチャ貰うてもなぁ」
「何を言うか。こりゃあただのデンデン太鼓ではないぞ。欲しい物を言ってポンポンと音を鳴らせば、欲しい物が出る不思議な太鼓じゃ」
「へえっ、この世にそんなモノがあるのかい」
「そうじゃ、試してみよか。爺は今、何が欲しい」
「そうじゃなあ、畑仕事をすると腹が減ってかなわん。早よ家に帰って夕飯の雑炊を食べたいと思ってた所じゃった」
爺は夕飯の雑炊を欲しがりました。
「よし、それを出してやる。炊きたての雑炊出よ」
天狗はそう言いながらデンデン太鼓をポンポンと鳴らしたら、湯気の立つ出来たての雑炊が丼で出てきました。
爺が食うてみたら、味もなかなかいい。
爺は喜んで簑と笠を天狗様にあげて、不思議なデンデン太鼓を貰ったそうな。
「欲しい物が三つまで出る。残りは二つじゃぞ。よう考えて出せ」
天狗は、こう言い残すと、蓑と笠を身につけて、どこかへ去ったという。
爺さんが家へ帰ると、婆が
「あれまあ、そんなに濡れて。簑笠つけて行ったのではなかったのか?早やく着替えないと風邪を引く、雑炊が出来てるからそれで温まりなさいな」
と言うた。
ですが爺は首を横に振って
「雑炊はもう、食ってきた」
と答えた。
「あれ、一体どこで食ったんだ?」
「実は畑で天狗様に出逢ってな、簑笠とこのデンデン太鼓と取り替えたんだ。この太鼓は宝の太鼓で、何でも欲しいモノが出ると言うので、試しに雑炊出して貰って食べてきたんじゃ。あと二つ、欲しい物が出る。婆さん、何か出して欲しいものはあるか」
「あれぇ、そんなにいい物貰ったのかい。そら良かったなぁ爺さん。それなら銭百両、言うてもらおうか」
婆は大金を出して欲しいと爺に頼んだそうな。
だが爺は
「そんな欲張ったこと言うな。十両でええ」
と欲張りな婆を叱りました。
爺は、婆のうらめしそうな顔を見ながら、
「銭十両、出て来い」
と言って、デンデン太鼓をポンポンと鳴らした。
目の前に、ピカピカ光る小判が十枚だけ、チャリンチャリンと出て来たそうな。
爺が喜んでいると、婆は、
「なんと欲のないことだな。今度は私が米を出して貰う」
と言って半ば強引にデンデン太鼓を取った。
「米なんてたくさん貰っても、置く場所がないぞ」
爺はハラハラしながら婆さんの行動を見守ります。
「判っとる、判っとる」
婆はそう言ってデンデン太鼓を振り上げて言います。
「こめ、くら、米、倉、米倉、こめくら、こめくら…ようけい出ぇ。こめくら、めくら、こめくら、めくら」
ポポンポン、ポポンポンポンと何度も何度も鳴らしました。
しかし、米や倉はひとつも出ないで、盲目(めくら)の子供(こ)が次から次へと出て来たんだってさ。
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