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イチョウの木




【Drift走り屋er 番外編】

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緑以外何もなく、不安と疲れで、寂しくなった頃にその寺が見えてくるという。
そんな山奥の、ある寺には春日シンジという白髪の若坊主がいる。

ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。

規則正しい音がする。
何かを引きずったような…例えば、竹ぼうきで何かを掃いているような、そんな音が聞こえる。

「おー、誰かと思ったら走二か!いらっしゃい」

若い坊主…シンジは人懐こい笑顔を浮かべると、同い年の幼馴染を迎える。
幼馴染(要するに俺のことなのだが)の名前は相良 走二。
何処にでも居る走り屋だ。

「この光景を見ても未だに俺はシンジが坊主とは思えないんだよなぁ…」

俺はボソリと呟く。
シンジは苦笑いしながら反論する。

「何でだよwww」

「走り屋だし、酒飲むし、人並みに女性に興味あるし、肉と魚ガッツリ食うし、坊主なのに頭が坊主じゃないし」

「ヒデェwww俺ちゃんとお経読めるだろーがよwww」

「いや、それはそうなんだけど…なんか…こう…」

シンジが写経していたり、木魚をポクポク叩いて読経していたりという光景を見ているにもかかわらず、未だに想像出来ないというか違和感バリバリなのである。

「今掃除中だからさ、あと10分待ってくれねぇ?」

シンジは済まなさそうに断った。
俺はだったら手伝うよ、と声を掛ける。

「助かるわ~」

シンジはそう言いながら、もう1本ほうきを取り出して俺に手渡す。
シンジに倣ってイチョウの葉っぱを掃き集める。

「なぁ、シンジ。今ふと思ったんだけど…」

「何だ?」

「神社やお寺って大体イチョウの木があるよな…」

「ああ、そうだよ」

「いや、何でかなって思って…」

「知りたいか?」

シンジはちりとりを出してトントン、とこちらに合図する。
俺はイチョウの葉をシンジのちりとりに集める。
シンジはイチョウの葉を器用に青いゴミ袋に詰め込みギュッとくくって封をする。
ゴミ袋を一箇所に集めて置くと、シンジはほうきとちりとりを元の場所へと戻した後、本堂へ上がって来いと手招きした。
本堂の奥…奥殿には、深夜見ると心臓が止まりそうなくらいに大きな大日如来様がいる。
大日如来の前には不動明王様が坐っている。
また、大日如来様の右には阿弥陀如来様、左に釈迦如来様、さらに十一面観音様。
それらが全て重要文化財というのだから驚きである。

「…怖いか?」

シンジは振り返って俺の顔色を窺う。

「…少し」

「そうか、なら少し大日如来様から離れて話をしようか」

シンジは奥から座布団を2枚を持ってきて座る。
音もなくすっと座って柔和な笑顔を浮かべている。
煙草を吸っていいかと俺に許可を取ってから1本取り出すと、いつもの様に旨そうに煙を堪能する。

「現在地球上にあるイチョウは人の手によって植えられたもので自生しているものはないんだってよ」

シンジはフーッと煙を吐き出し、呟く。

「じゃあ寺や神社のイチョウも誰かが植えたのか?」

「そういうことになるな。まあ、勿論イチョウを植えてるのにはちゃんと理由があるんだぜ」

「理由あるの!?」

「あったりまえだのクラッカー」

「へぇ…」

「神社や寺って大体木造建築だから昔っから火災の被害が多くてな…どれだけ気をつけていても神社や寺の近くで火事が起こった場合は飛んできた火の粉で火事になっちまうんだよ。そこで、イチョウを植えたんだ」

「?」

「さっぱりわからんって顔だな。イチョウは幹や枝、葉っぱにまで水分を多く含んでいるから少しくらいの火の粉ならその水分で消してしまうんだよ」

「ほぉー!!」

「神社や寺にあるイチョウは大切な神様や仏様を守りたいという思いが込められているんだぜ」

シンジはタバコの火を消して携帯灰皿に入れると、スッと音もなく立ち上がり、何処かへ行って戻ってきた。
手には何かが入った2つの封筒が握られていた。
2つの封筒の内の1つを俺に手渡し、一緒に食おうぜと声を掛ける。
封筒の中には殻付きの銀杏があった。
俺は素直に殻を剥きながら銀杏の実をもそもそと食べる。
中身が爆発してデロデロになっていたり、食感がネチョネチョしていたりしてやや難有りだが、うぐいす色の銀杏はほんのり甘く、また予めシンジが塩を振っていたらしく、十分…いや、かなり美味しい。

「銀杏にも花言葉というのがあってな。『鎮魂』 『長寿』『しとやか』という意味が込められている。神社や寺に植える木としては最適だろう?」

シンジは人懐こく笑う。

「ああ、そうだ。後で集めた落ち葉で芋でも焼こうか」

シンジは早くも銀杏を食べ終わり、秋の味覚を堪能しようと画策しているようだった。

「まだ食うのかよ…」

俺がそう言うと、シンジはイタズラ小坊主のように人懐こい笑顔を浮かべた。


END.


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