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ガラスの絵本




チッ、チッ、チッ、チッ、チッ…

時計は休む事なく動き続けている。
日本のマンションの一室。
時計はとある死体を見下ろしていた。
死体は静かにベッドに横たわっている。
その様子は何故か美しく、まるで白雪姫の様に眠っていた。
奇妙な事に、死体の周りには何も描かれていない白紙の本が一冊、開いたまま置かれている。

「私は物語の登場人物になれたのかな?」

死体と同じ顔の幽霊が、死体を見下ろしながら呟く。
幽霊は、自分の死体を見つめていた。

「さあね」

黒い特攻服姿の奇妙な死神は、幽霊の呟きに答える。

「私はただ、貴方が死んだ理由を訊きたいんですよ」

死神Navy(ネイビー)は、不機嫌そうに幽霊に言った。

「描けなくなったんだ。
私が自殺した理由はね、絵本が描けなくなったからなんだ」

「抽象的過ぎて意味が分からないね。
死神にも分かるように説明してくれないかな?」

「絵本作家なんてそんなもんだよ。
私はね、もう絵本が描けなくなったから死んだんだ」

「それだけの理由で?
馬鹿馬鹿しい」

Navy(ネイビー)は嘲笑する。

「うん、それだけの理由で私は死んだんだ。
だって、絵本が描けない絵本作家なんていらない。
生きていても意味は無いよ。
白紙の絵本はガラスの絵本。
触れる事は出来るけど、読む事なんて出来やしない。
本というものは読めるからこそ価値があるんだ」

「馬鹿馬鹿しい。
君は絵本の登場人物になんてなれやしない。
せいぜい…記者が新聞の片隅に笑い者として面白可笑しく記事に書くだけだろうね」

死神は突き放すように言い放った。

END.


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