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18歳の嫁




【18歳の嫁】


叶祐三はイライラしながら1人で部屋の中を歩き回っていた。

「何をしているんだよ…全く…」

と誰も居ないのにブツブツと呟いては腕時計を見る。
そんなことを何十回も繰り返した時、ようやくその部屋のドアが開き、彼の妻の順子が入って来た。

「何をしてたんだ!!遅いじゃないか!!」

「そんな事言ったって仕方がないじゃないのよ」

と順子は文句を言いたげにしていたが、すぐに続けて娘の明海が入って来たので口をつぐんだ。

「一体どうしたの?」

中学3年生…15歳の明海は学校帰り、ブレザーの制服姿でカバンをぶら下げて帰って来たのである。

「まあ座れ」

と叶祐三は額にシワを寄せた。
そして、一言。

「もうじき親父が来る」

「おじいちゃんが?」

娘の明海はソファに座って脱力した。

「それがどうかしたの?」

明海の祖父、叶才蔵がここへ来るのは少しも珍しいことではない。
何しろここは祖父の持ってる会社である。
しかも祖父は65歳なのだが50代…いや、それよりももっと若々しいと思えるくらいに元気なのだから。

「あなた、もしかしてこの間の話のこと?」

と順子が言った。

「そうなんだよ。今日、ここへ相手を連れてくるって言うんだ…」

「相手って?」

明海は訊いた。

「…明海、おじいちゃんはね、新しい奥さんをもらおうっていうんだよ」

「ええ!?」

明海は目を丸くする。

「全く…いい年齢なのに困ったもんだよ…」

「別にいいんじゃないの?だっておじいちゃんあんなに元気なんだし、おばあちゃんが亡くなってからもう10年以上経つんだよ」

「それだけじゃないのよ問題は。あんたは黙ってなさい」

順子が釘を刺す。
明海は口を尖らせた。

「いや、俺だって親父がどうしても再婚したいって言うんなら仕方ないと思うさ。しかしな…」

と叶祐三は頭を抱えながら言う。

「何しろ、年齢が…」

「いくつなの?相手の歳は」

と順子が聞く。

「いや、それが…『少し歳が離れているけどな』って笑ってるからいくつかと思って訊いたんだけど…」

叶祐三は溜息を付いた後に躊躇いながら言う。

「何と、相手の女性は18歳だって言うんだよ…!」

「18!?48とかの間違いじゃないの?」

順子が唖然とする。

「そう思って念を押して訊いたよ。でも間違いなく18歳だと…」

「どうかしちゃったんだわ」

順子も溜息を付いた。

「私と3つしか違わないの?凄いじゃない!!」

娘の明海は素直に驚く。
そんな明海を順子はキッと睨みながら言った。

「何を呑気なこと言ってるの。そんなの、財産目当てに決まっているじゃないのよ!誰が18で65の年寄りと結婚なんて…!」

「そこなんだよ。親父だってそれぐらいのこと分かっているはずなのに…」

「若い子にコロッと騙されるなんて、お義父様ももうろくしてきたのね」

黙ってはいたが、明海は内心嫌な気分だった。
例え相手が18歳だとしても、おじいちゃんが本当に好きなら、他の人間が口を出すことじゃないだろう。
父の祐三と母の順子が怒っているのは、自分たちに回ってくるはずの財産がその若い奥さんの所へと流れてしまうということなのだ。
勿論、明海も父がこの会社にいるおかげで贅沢をしていられるという事は分かっている。
でも、おじいちゃんの財産を当てにしてまで暮らしていたくなかった。

「明海、何処へ行くの?」

「トイレ」

明海は社長室を出た。
父と母の愚痴を聞きたくなくて思わず出てきてしまった。

「あ、おじいちゃん!!」

明海は祖父がエレベーター前のソファにゆったりと腰をかけているのを見つけた。
明海は笑顔で駆け寄ってきて祖父に訊く。

「いつ来たの?」

「おお、明海か。どうしたんだ?」

叶才蔵は、孫の顔を見て顔をほころばせた。

「お父さんが学校に電話して来て…びっくりしちゃった。おじいちゃんが急に倒れでもしたのかと思って…」

「お前は優しい子だな」

と叶才蔵は孫の頭を撫でた。

「ねぇ、おじいちゃん。再婚するって本当なの?」

「それも聞いたのか。ああ、本当だよ」

叶才蔵は頷き、言う。

「今化粧を直してる。お前たちとも是非仲良くなってもらわんとな」

「私はいいけど…お父さんやお母さんは反対みたい」

「そうか?」

予想していたのか叶才蔵はさほど驚く様子はない。

「でもお前がどう思うのかは気になるのう」

「おじいちゃん、その人のことが好きなんでしょ?だったら別にいいじゃない」

「そうか、ありがとう」

叶才蔵は笑い、

「…やあ、来たな。この子は孫の明海だ。で、こちらはわしの再婚相手だ」

明海は『その人』を見て、目を丸くした。



「何だ、明海か」

と、社長室の中をまだ落ち着きなくウロウロ歩き回っている祐三が、開いたドアの方を見て言う。

「お父さん、おじいちゃんすぐそこまで来てたよ」

「何だって?」

「でもお父さんたちが反対してるって言ったらがっかりして会いたくないって」

「何処にいるんだ?」

「ちょっと待ってよ。お父さんたち、何て言うつもりなの?」

明海はドアに向かおうとする祐三の前に立って遮りながら言う。

「おじいちゃんは騙されているんだって言うつもりなの?」

「明海、これはね、おじいちゃんのためなのよ」

と順子が言った。

「後でおじいちゃんも私達に感謝するわよ」

「そんなの絶対おかしいよ!」

「明海…」

「おじいちゃん、一生悔やんで、寂しく暮らしていくことになるかもしれないよ。そんなのぜったい悲しいよ。私だってずっと歳の離れた人を好きになるかもしれないんだよ?それを歳が離れているからって理由だけでお父さんとかお母さんとかに反対されて諦めたら、一生悔やむと思う!!」

「明海、それでもな…」

「お父さんは黙ってて!自分でその結果を引き受ける覚悟があれば他の人がとやかく言うなんて絶対におかしい」

祐三と順子は顔を見合わせた。

「分かった」

祐三は息をついた。

「お父さんたちも少しカッカしすぎていたようだ。ともかく、親父の選んだ相手だ。一度先入観なしで会ってみよう」

「そうだよ!それがいいよ!!」

明海はパッと表情を明るくしてドアを開けた。

「おじいちゃん、入っていいよ!!」

叶才蔵が『彼女』を連れて入って来た。
祐三と順子はポカンとしていた。
叶才蔵と一緒に入って来た女性は、どう見ても『可愛いおばあちゃん』で、多分祐三と順子よりも年上に見えたからだ。

「息子の祐三と嫁の順子だ。で、こちらがわしの再婚相手の、博子だよ」

「あの…」

祐三が呆気にとられて口をパクパクさせながら言う。

「年齢が、離れてる…って…」

「ああ、博子の方が7つも上だからな」

「7つ?え?じゃあ」

「72歳ですの、今年」

と博子が微笑んで言った。

「でも18歳だって…」

順子が言うと、博子が笑う。

「そうですね。私は18歳。うるう年の2月29日の生まれですから」

博子はそう言うと、才蔵の手をしっかり握った。
まるで本当の18歳みたいだと明海は思ったのだった。


END.
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