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走り屋群像劇場『走り屋3rd+』



【走り屋群像劇場『走り屋3rd+』】


走り屋群像劇場『走り屋3rd+』 ACT6:地蔵

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再度山 太龍寺の地蔵


「偶然にも西宮市に来た俺達は…」

健二が助手席で神妙な顔で呟く。
神 妙 な ツ ラ し や が っ て 。

「Twitterのbotネタやめろ。多分ここでは通用せんぞ」

走一が運転席でツッコむ。
走一と健二は走り屋である。
こうして昼夜関係なく峠や山を走り込んでいる。

「ところで、西宮といえばアレだよな走一」

「ああ、涼宮ハルヒだな」

「そうそう、ハルヒな。走一はハルヒの登場人物の中で誰が好き?」

「長門有希。次点ちゅるやさん」

「男は黙ってみくるだろ!?」

「現実世界でみくるやハルヒみたいな女が居たら張り倒してるわ」

走一は表情を変えずに言う。
健二は『なんだと!?』と既にいきり立っている。
どんだけフィクションに思い入れあるんだこいつ。

「大体、涼宮ハルヒの憂鬱とか2003年に流行ったもんだぞ。今更ここで語る必要あんのか?」

「あるよ!需要はあるよ!!」

「健二、お前誰に向かって言ってんの…」

走一は呆れながら車のハンドルを切る。
アニオタだなぁと苦笑いしながら西宮のとある車パーツ屋に到着した。
走一たちは車のパーツを買いに西宮まで来たのである。

「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら…」

健二は言いかけてはたと口をつぐんだ。
そして走一の方をまじまじと見つめる。

「5年前からやって来た過去人ならここに…!」

ずびし。

走一は無言で健二の脳天にチョップを食らわした。
説明しよう。
相良 走一、27歳。
彼は22歳の時、再度山で車に乗ったままタイムスリップしてしまい、5年後の未来へ来てしまったという稀有な経歴の持ち主である。
見た目的には22歳だが、実年齢は27歳である。

「5年くらいのタイムスリップなんて、そうそう変わんねーよ」

「ばっきゃろー!5年あったら何回トイレに行けると思ってるんだ!?」

「健二くん健二くん、もう少しマトモな例えはないのかな?」

「5年あったらなぁ!ドリフトできなかった俺がドリフトできるようになるんだぞ!?」

「下手だけどな」

走一は苦笑いしながら車のパーツの料金を支払った。
取り付けてもらうと工賃を取られるのでパーツを受け取って車に載せる。
と、いってもそんなに大きなサイズではない。
足回り…サスペンションである。

「さ、用事は済んだし戻ろうか」

「ノン。せっかく西宮まで来たんだ。あそこに寄らなきゃ損だ」

「どこだよ…」

「車の鍵よこせ。この健二様が直々に運転してやろう」

「…法定速度は守ってくれよな」

走一はそう言うと、車の鍵を健二に手渡した。
健二は鍵を受け取ると、運転席に座ってシートベルトをつけてエンジンを掛ける。
続いて走一は助手席に乗ると、シートベルトをつけてあくびをぶちかました。

「この辺に『あほや』っていう美味いたこ焼き屋があるらしいぜ」

「マジで!?」

走一は目を輝かせる。

「あれ、お前たこ焼き好きなの?」

「関西人だぞ。たこ焼きはおやつ感覚だろ」

「だなーwww」

健二はそう言うと、車を走らせる。
やがて車は『あほや』の店の前に停車する。

「俺が買ってきてやるよ」

健二はそう言って車のエンジンを止めると小走りで駆けてやがて10分ほどで戻ってきた。

「ほらよ」

買ってきたのは12個入り×6人前。

「ちょ…多い…」

「大丈夫、冷えても美味いし家の電子レンジで加熱すればOKだから余分目に買ってんだよ」

そう言えば健二はよく飯を食う奴だった。
少なくとも走一の2倍は食う。
とあるとんこつラーメン屋で20分以内に4人前食ったら無料とかいうのにもチャレンジして見事食いきった経歴の持ち主だったことを今更思い出した。

「俺は運転するからあれだけど、熱いうちが美味いから走一先に食えよ」

健二はニッと笑ってゴソゴソと袋を探るとたこ焼きを差し出す。
走一はたこ焼きを受け取ってパックを開ける。
そこには香ばしい香りのたこ焼きがぎっしりと並ぶ。

「頂きます」

と手を合わせると箸で1個つまんでひょいと口に入れた。
はふはふ。

「1人で2人前は食えると思うぞ」

エンジンを掛けて車を走らせる健二。
普段小食な走一を気遣ったのかもしれない。
最初走一はちびちびたこ焼きを食べていたが、やがてもぐもぐと頬張り食べ始めた。
どうやら味がかなり気に入ったらしい。

「美味いか?」

返事がない。
はふはふもぐもぐ。
健二がいつも車内で物を食う気持ちが少しだけ分かった気がする。

「辛い!美味い!!」

走一は目を輝かせて満面の笑みで言い放つ。

「あ、それ七味唐辛子入りの奴。走一は辛いの平気かなと思っ」

健二はチラリと助手席の走一を見た。
そこには子供のようにたこ焼きを頬張る走一。

「…口の周り、ソースついてんぞ」

健二はポケットティッシュを走一に手渡した。



やがて日が暮れ。
健二はとある場所に車を止める。

「なあ、走一」

「うん?」

「手振り地蔵って知ってる?」

健二が話題を振るとさっきまで朗らかにたこ焼きを頬張ってた走一が硬直した。

「…怖い話ですか」

「都市伝説です」

では、いつもの定型文いきましょうか。

「知ってるか?手振り地蔵は俺の友達の友達から聞いた話なんだけどな…」

都市伝説。
それは、『友達の友達から聞いた』というくだりで始まる、根拠のない噂話である。
しかし、都市伝説は本当にただの噂話なのだろうか?
ひょっとしたら中には、真実の話も含まれているのかもしれない。

「急用を思い出した、帰る」

走一は食べ終わったたこ焼きのパックを畳むと顔色を変えて言った。

「ぬるっふっふ。君は歩いて帰るのかい?」

「あ」

走一の車の鍵は今現在健二が所有している。
走一は後悔した。
安易に健二に車のキーを渡すべきではなかったと。
それほどまでに走一は都市伝説や怪奇現象を嫌うのである。
何故か?
相良 走一という人物は幽霊や怪奇現象といった類を一切信じてはいない。
現実主義者であるのだが、不思議な事に人一倍霊感が強い。
頑なに幽霊や怪奇現象を否定するという理由はただ1点。
怖いから。

「健二ィ!お前最初からこのつもりでたこ焼きの話題振ったな!?」

「まあちょっと聞いてけよ。手振り地蔵はこの辺りじゃ有名だぞ?」

「却下。俺はそういう都市伝説とか怪奇現象とかは信じないぞ!!」

「信じないならそれでいいじゃないか。話くらいは聞いとけって」

「はぁ…死にたい…」

「そこまで嫌なの!?」

西宮市でも相変わらずのボケツッコミを繰り出す走一と健二。

「あのな、手振り地蔵の話は六甲・再度の走り屋なら知っとかなきゃならない話なんだよ」

「アタイ今日限りで走り屋やめます。これからは普通の女の子になりたい…!」

「君は男の子でしょ!?そこまで嫌なの!?聞けよ!!」

「ぎゃーてーぎゃーてーはらぎゃーてー」

「念仏唱えだした!!」

「どうしても聞かなアカンの?」

走一は既に涙目である。
健二は笑顔で言い放つ。

「まあここがその現場…西宮市立満池谷墓地・火葬場なんだが」

「ギャピィ」

健二は黙って指をさす。

「あのブロンズ像知ってる?」

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健二の指差す先には少女の像があった。
高さは1m程だろうか。
花崗岩の高い台座の上に建てられ、左手で手毬を抱え、右手を空にかざすように差し出している。
足元にはウサギが寄り添うように座っている。

「ってこれ節子や…」

走一は呟く。

【少女のブロンズ像】
西宮市立満池谷墓地・火葬場にある少女のブロンズ像。
『火垂るの墓』に登場する清太、節子兄妹の節子をモデルにしているとも言われるが定かではない。
確かに、小説では清太・節子兄妹は叔母の家を出、満池谷墓地のすぐ傍のニテコ池のそばの横穴で生活しているというシーンが登場する。
ウサギを可愛がっていた女の子が、ボールを追いかけて交通事故にあって亡くなり、その親が寄贈した、という説も存在する。
以前は墓地中央のロータリーの中央にあったのだが、平成7年(1995)の阪神淡路大震災で倒壊し、現在は納骨堂の前に場所を移して建てられている。


「この像は通称『手振り地蔵』っていう」

健二は少し冷えたたこ焼きを開けて頬張りながら解説する。

「この『手振り地蔵』にはとある伝説があってな」

「怖い話ですか」

「走り屋は皆知ってる。言うほど怖くはない」

健二はあまり怖くないと前置きして解説を続ける。

【手振り地蔵1】
深夜にこの像を見に行くと、少女の上げた右手が『おいでおいで』と手招きをするように動いて見えるらしい。
噂が流行った当時は毎晩多くの若者達が見物に来るほどだった。
噂は他にも色々なバリエーションがあり、少女の手招きを見てしまうと必ず帰りに(自動車)事故を起こすとか、深夜に少女が毬をついている音が聞こえるとか、雨降りの日に少女の像が毬をつくとか、像の足元のウサギが駆け回るといったものから、墓地とニテコ池の間を走る道路を少女の幽霊が追いかけてくるといったものまで様々である。
また、少女の像(幽霊)ではなく、この少女の像を見に行って像の周囲にたくさんの子供の霊を見たという話もある。
その話によると、その子供(の幽霊)たちは、見物に来た者たちを見つけると一斉にこちらに向かって駆け寄ってきたので、慌てて車を出した。
すると、その翌日、車の其処彼処に小さな子供の手形がついていたという。
女の子がまりをつきながら追いかけてくる音が聞こえた人は死ぬという話もある。

「どう?」

健二は走二の様子を見ながらたこ焼きを黙々と頬張っている。

「どう?じゃねぇよ…!怖ぇに決まってんだろ…!!」

ぎりぎりぎり。
走一は健二の胸倉を掴んで首をグイグイ締める。

「走一、ギブギブギブ」

走一は青い顔をしながら健二の胸倉から手を離すと、ブルブルと震えている。
してやったり。
健二は満足そうにニヤニヤしながらたこ焼きのパックを畳むと口を開いた。

「そろそろ暗くなってきたし、これからが本番ですな。走一、ひょっとしたらこの像手を振るかもしれないぞ」

健二が振り向くと、走一は真顔に戻っている。
あれ?

「走一さん?」

「夜の闇に街灯の明かりで照らし出された少女の右手を凝視していると、目の疲れから来る錯覚で微妙に揺れている様に見えるのではないか」

「走一さん?」

「幽霊なんてのはアレです。プラズマです」

「走一さん?」

「幽霊なんてのは全部プラズマで説明がつくんです。これは科学でも証明されています」

「おーい…」

走一の恐怖心が限界値を突破したらしい。
スッと真顔になるといきなり某大学教授みたいなことを言い出した。

「そもそも、この少女の像はブロンズ像であって地蔵とは言いません。誰ですか、ブロンズ像を地蔵と言うのは」

「いや、それはだな…」

「いいですか、これはブロンズ像です。地蔵じゃありません」

「あ、ワリィ走一。実はまだこの話は途中でな…」

「へ?」

走一がフリーズした。

「確かに、これはブロンズ像であって地蔵じゃない。この話には続きがあるんだよ」

【手振り地蔵2】
一般的に西宮市の手振り地蔵と言うと走り屋たちは少女のブロンズ像を挙げるが、実はそれは間違いであるという。
隠された事実がある。
本当の「手振り地蔵」は別の所にあったのである。
ただ、たまたまその近くに手を上げた少女のブロンズ像があることからそれが混同され、いつしか“少女のブロンズ像=手振り地蔵”になったのが真相だという。
では、本当の手振り地蔵は何処にあるのか?
それは、同じ満池谷墓地の納骨所(納骨堂ではない)のピラミッド型に積み上げられた石仏や墓石の頂点付近、二つ並んだ石仏の右の石仏が“本当の手振り地蔵”なのだという。
そして、深夜に見つめていると希に手招きをするのを見ることがあるという…


「手振り地蔵はブロンズ像じゃない。実は手振り地蔵には旧説・手振り地蔵と真説・手振り地蔵が存在するんだよ」

健二は車に乗れと促す。
走一は大人しく車に乗った。
心なしか覇気がない。
健二は車を少し走らせ、また止める。

「これだ」

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ピラミッド型に積み上げられた石仏や墓石。
頂点付近には、二つ並んだ石仏がある。

「これ?」

「そう。右な」

右の石仏が“本当の手振り地蔵”なのだと健二は言う。

「場所が近いし混同されたんだろう。本当はこっちが本物。走一、お前霊感あるんだろ?何か見える?」

「健二、遊び半分で心霊スポットに行くのは良くないぞ」

「遊び半分じゃねーよ、本当だよ」

「だったら、少しだけ時間をくれ」

走一は言うと、地蔵の前に立った。
しゃがみこんで健二からたこ焼きのパックを1つぶん取ると、そっと供える。

「健二、お前も手を合わせろ」

走一は目を瞑って手を合わせる。
健二も言われるがまま、走一を真似て手を合わせた。
数分の時が流れただろうか。
走一は目を開けてたこ焼きのパックを袋に入れると立ち上がる。
立ち上がった後、走一は優しく地蔵を撫でた。

「さ、とりあえず帰ろうか」

晴れ晴れとした顔で走一は健二に声を掛ける。
走一には何が見えていたのだろうか。

「走一…」

「なあ、健二。そもそも地蔵って何か知ってるか?」

「何って言われても…」

「『町の結界の守護神』…特に『子供の守り神』だってよく言われる」

「走一、お前…何か見たのか?」

「…いや、何も」

走一は目を逸らして否定した。

「健二、地蔵…特に心霊スポットとされる地蔵にはお供えを持って行く事をおすすめするよ」

「走一さん?」

走一は笑顔のまま何も言わない。
ただ、走一が地蔵を撫でた時の顔がまるで子供の頭を撫でたような優しい表情をしていた。
それが健二には印象に残った。
走一と健二は車に戻る。
車のライトが通り過ぎ、やがて墓地は誰もいなくなり静かになった。
走一の車は裏六甲を駆け抜ける。
トンネルを抜けたカーブ付近。

走一と健二は知らない。
手振り地蔵の話は裏六甲にもある…ということを。



【追記】
地蔵には二十八種利益と七種利益があるという。
基本的に利益をもたらす『町の結界の守護神』…特に『子供の守り神』だとよく言われる。
お参りする際には子供が喜ぶような菓子を持っていくのが普通。
『手振り地蔵』については手を振ると事故をする・死ぬとあまりよろしくない方向で噂されているが、手を振るのを目撃した走り屋・若者たちに危険を知らせて警告して事故を防ぎたいのかもしれない。
いずれにせよ遊び半分で心霊スポットに行くものではない事を追記しておく。

二十八種利益
・天龍護念(天龍が保護してくれる)
・善果日増(善いカルマが日々増していく)
・集聖上因(聖にして上なるカルマが集まってくる)
・菩提不退(悟りの境地から後退しない)
・衣食豊足(衣服や食物に満ち足りる)
・疾疫不臨(疫病にかからない)
・離水火災(水難や火災を免れる)
・無盗賊厄(盗賊による災厄に遭わない)
・人見欽敬(人々が敬意を払って見てくれる)
・神鬼助持(神霊が助けてくれる)
・女転男身(女性から男性になれる)
  ※性転換や性同一性障害の治療ではなく、当時の社会での男尊女卑の思想に基づいている
・為王臣女(王や大臣の令嬢になれる)
・端正相好(端正な容貌に恵まれる)
・多生天上(何度でも天上に生まれ変わる)
・或為帝王(あるいは人間界に生まれ変わって帝王になる)
・宿智命通(カルマを知る智慧を持ち、カルマに通ずる)
・有求皆従(要求があれば皆が従ってくれる)
・眷属歓楽(眷属が喜んでくれる)
・諸横消滅(諸々の理不尽なことが消滅していく)
・業道永除(カルマが永久に除かれる)
・去処盡通(赴く場所にうまくいく)
・夜夢安楽(夜は夢が楽しめる)
・先亡離苦(先祖が苦しみから解放される)
・宿福受生(幸福になる運命の人生を授かる)
・諸聖讃歎(諸聖人が讃えてくれる)
・聰明利根(聡明で利発になる)
・饒慈愍心(慈悲の心に溢れる)
・畢竟成佛(必ず仏になる)

七種利益
・速超聖地(速やかに聖地を超える)
・悪業消滅(悪いカルマが消滅する)
・諸佛護臨(諸々の仏が護ってくれる)
・菩提不退(悟りの境地から後退しない)
・増長本力(本来持っていた能力が増幅される)
・宿命皆通(カルマの全てに通ずる)
・畢竟成佛(必ず仏になる)

地蔵は沢山の利益をもたらしてくれるのだ。
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