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走り屋群像劇場『走り屋3rd+』

【走り屋群像劇場『走り屋3rd+』】

走り屋群像劇場『走り屋3rd+』 ACT7:幽霊局員(前編)

「そもそも何でクリスマスに男2人でケーキを運ばにゃならんのだ」

流 健二(ながれ けんじ)は愛車のミラのハンドルを握りながら、助手席の相良 走一(さがら そういち)に話しかける。
車は有馬温泉の大通りを通り過ぎ、蓬莱峡へと向かう。
2人は走り屋だった。
季節も時間も関係なく、こうして2人で峠や険しいカーブの続く山道をいかに速く運転するかだけに固執する人間、または集団。
レーサーではなく、暴走族でもない。
それが、走り屋なのだ。

「知るか。こっちが訊きたいわ」

相良 走一(さがら そういち)は赤と白の衣装に身を包んでいた。
季節は冬、時間は夜。
世間一般では『クリスマス』と呼ぶ。
2人は知り合いの子持ち警察官に頼まれ、即席サンタクロースになりきり、クリスマスプレゼントとしてケーキを輸送するという役目を請け負っていた。
知り合いの子持ちの警察官は高木といった。
警察官の高木は12月20日頃、いきなり2人に電話をかけて寄越してこう言った。

「もしもし、おれおれ。兵庫県警の高木だけど」

「そういう詐欺はもう飽和状態なのでお断りしますー」

走一は無味無臭な声で電話の相手に言い放つ。
既に声で本人かどうかは分かっているのだが、そこを敢えてとすっとぼけるのが関西人なのだ。

「まてこら待たんかい相良 走一君」

「やっだキモい。俺の名前も調べてるんですか。男が男を調べるなんてストーカー通り越してホモですよ、ホモ。ホモい」

「ホモちゃう。そしてホモホモ連呼すな」

「存じております。用事はそれだけですか?用がないなら切りますよ?」

「待ってったら!実は君たちにお願いがあるんだ」

「そんなお願いは願い下げだ」

「まだ何も言ってないよね!?」

電話越しの高木の声は切実だった。
走一はケタケタと笑うと、高木に言う。

「一体何なんです?お金は貸しませんよ」

「12月24日の夜は暇だよね、君」

「何で断定口調なんだコラ。臓物引きちぎるぞ」

「え、何?走一君、今年はついに彼女と過ごすいつかのメリークリスマスなのかい?」

「…違うけど」

走一は涙声だった。
彼女いない歴=年齢の彼には大打撃なのだ。

「ああ良かった。12月24日の夜は暇なんだね?」

「それが何か!?」

「実は言うとさ、サンタ服着てケーキを俺んちに運んで欲しいんだ」

数秒の沈黙が流れた。

「は?」

「いや、だからね。サンタ服着てケーキを俺んちに運んで欲しいんだ」

似非サンタクロースリターンズ。
以前にも相良走一は高木に頼まれて半ば強制的にサンタクロースの格好をさせられてサンタを演じてくれと頼まれたことがあった。

「…何でまた俺がそんな面倒くさいことしないといけないんですか」

「サンタ服とケーキは支給します。できれば流健二くんも誘って下さい」

「いや、あのね?」

「謝礼付き」

「行きます」

走一は即答するとすぐに健二に電話をかける。
健二は寝ぼけたような声で電話に出る。

「もしもし、もう食えません…」

「健二、お前寝てたのか?」

「むに…走一か。何だ?」

「お前さー、12月24日暇?」

「走一、俺には嫁さんがいるんだぞ?」

流 健二。
彼には嫁がいる。
流 涼子。
旧姓、斉藤 涼子。
殆ど健二の一目惚れだったのだが、車を通して仲良くなったのが彼女。
涼子の方も涼子の方で走り屋に憧れを持つようになり、走り屋として健二と運転技術を高めていく内に惚れていったとか。
走り屋には悲恋が多い中、両想いとして成立し、ゴールインした稀なカップルなのである。

「そうだった。お前には嫁さんがいたんですよね。ぐすっ」

「おい泣くなよ…」

「そもそもな、クリスマスにカップルでイチャイチャする、という習慣は日本人だけでな」

「走一、お前何が言いたいいんだよ…」

「アメリカでクリスマスって言うとファミリーで過ごすもんなんだよ。カップルとかチャチな単位じゃねぇ。ファミリー、要するに親戚友人一同皆家族が単位なんだよ。日本みたいな核家族社会じゃねぇんだよ」

「言いたいことはそれとなく分かるけど嫉妬するのはやめて下さい」

「この浮かれポンチめ!独身男に正拳突きを腹に連打されて臓物ぶちまけてしまえ」

「言いたいことはそれだけか独身男」

「うん」

健二は電話越しにでっかい溜息をついた。
あのな、と前置きしてから言葉を続けた。

「涼子ちゃんという嫁さんはいるが、実は涼子ちゃんは12月24日も25日も仕事なんだよ」

「なん…だと…!?」

「OLやってるからね。年末は忙しいんだそうだ。忘年会とか会社上の付き合いとかもあるしな」

「じゃ、じゃあ24日健二は?」

「暇。工事現場は早めに仕事納めだからな。本音を言うと涼子ちゃんとイチャイチャしたかった…」

電話の奥で健二が悶えている。
そんな健二はさっさと無視して話を進めることにする。

「とにかく、健二は24日の夜は暇なんだな?」

「ああ、それがどうしたんだよ」

「実のところさっき兵庫県警の高木さんから電話がかかってきてだな…サンタの」

「待って、もう大体見当ついた。『サンタの服着てケーキかプレゼントを運んで欲しい』だろ?」

長年高木と付き合いをしていると、お互いの思考や思惑が見えてくる。
兵庫県警の高木は最愛の妻を交通事故で亡くした後、ずっと男手ひとつで子供を育ててきているのだ。
高木は『家庭より仕事を優先して妻の死に目に立ち会わなかった最低な男』と自分を卑下するが、走一も健二もそうは思わない。
再婚せずにいるのは未だ妻を愛しているから。
いつも子供のことを考えてるのは妻に注げなかった分の愛を注いでいるから。

「…分かったよ、手伝うよ。また俺から高木さんに連絡つけとく」

健二は了承した。
健二は走一が自分を誘った理由もだいたい見当がついているし知っている。
相良走一は交通事故の後遺症が未だ残っている。
雨の日や雪の日、気温が落ち込んだ日はどうしても関節が痛む。
運転できなくはないが、やはりいつもより反応が鈍るのだ。

「本当か。ありがとうな」

「運転は俺に任せろー」

軽快な口調で言うと、健二は電話を切った。
そうして冒頭の話に戻る。

「しっかし豪快だな、高木さん…」

走一は後部座席を振り返る。
後部座席に固定されているケーキは2ホールあった。
その内の1ホールは謝礼である。

「謝礼が現物支給とか」

健二は苦笑いしながら緩やかにハンドルを切る。
蓬莱峡のヘアピンカーブを抜ける。
昼間の蓬莱峡は剣山のような険しい花崗岩が見える。
殺伐とした白い無数の剣山が非現実的で、思わず見とれてしまうほどだ。
しかし夜になると一転、外灯は殆ど無い険しく複雑な山道となる。
熟練した運転技術を持つ走り屋でも、少しの油断で車をクラッシュさせてしまう恐れがあるのだ。
慎重にコーナーを潜り抜けながら、健二はそういえば、と口を開いた。

「なあ走一、幽霊局員って知ってるか?」

それでは定型文、行ってみましょうか。

都市伝説。
それは、『友達の友達から聞いた』というくだりで始まる、根拠のない噂話である。
しかし、都市伝説は本当にただの噂話なのだろうか?
ひょっとしたら中には、真実の話も含まれているのかもしれない。

「幽霊局員?なにそれ?」

コンビニで買った温かい紅茶を啜りながら、走一は健二に尋ねる。

「俺も詳しくは知らないんだけどさ、この辺りで出るらしいぜ」

「出るってなんだよ。具体的に言え」

走一は露骨に顔をしかめた。
相良走一という人物は幽霊や怪奇現象といった類を一切信じてはいない。
現実主義者であるのだが、不思議な事に人一倍霊感が強い。
頑なに幽霊や怪奇現象を否定するという理由はただ1点。
怖いから。

「だからさ、幽霊。郵便局員の」

「出てたまるか」

走一は即答した。
健二はお構いなしに話を続ける。

【幽霊局員】
郵便局員の情熱とも呼ばれる。
ある郵便局員が山道で交通事故を起こして即死した。
郵便物を積んだ車は炎上し、半数の郵便物が燃えてしまった。
事故で死んだ郵便局員の彼は、郵便物を届けられなかったという強い念から、事故現場に夜な夜な現れるという。
郵便局のトレードマークである赤い車と、赤い炎を纏って。


「でな、その郵便局員の幽霊はいつしか幽霊局員と呼ばれるようになってな…」

健二は助手席の走一の様子をチラリと見る。
いつもならこういった都市伝説や怪談話に恐怖で渋い顔をするのだが、その日は違った。
珍しく健二の話を大人しく聞いているのだ。

「あれ、お前こういう都市伝説や怪談話嫌いだったんじゃなかったっけ?」

「内容にもよるよ」

「内容?」

「怖い話というより、切なく儚い話だろ、それ」

「確かになぁ…」

「形あるものはいつかは消えてなくなる。手紙然り、人間然り。諸行無常を感じるね」

相良走一は人一倍霊感が強い。
霊感が強いというのはある意味繊細な感性の持ち主でもあるということ。
心霊スポットなどに行くと走一は時々邪気にあてられて調子が悪くなることも多々あった。
低気温で痛む関節をさすりながら、走一は言い放つ。

「健二くん、噂をすればお出ましのようだよ」

「ファッ!?」

外灯のない蓬莱峡に赤い光がチラチラと浮かんでは消えてゆく。
健二は思わず車を停車させた。
走一は車を降り、迷わず光の方へと進んでゆく。
健二は慌てて後を追う。
2人の視線の先にあるのは見慣れた郵便局の車だった。
ただ、普通の郵便車ではなかった。
炎に包まれて焼けただれていた。
郵便車は炎に包まれ、光を発していた。
走一は誘い込まれるようにふらふらとした足取りで近付いてゆく。
そっと手を伸ばすが、その郵便車は実体がない。
実体がないはずなのだが、2人にははっきりとその現象が見える。
触ろうとしても触れない。
走一はドアに手を掛けるが、いきなりビクッと驚くと手を引っ込めた。

「熱っ!!」

走一の左手は火傷したように真っ赤になっていた。

「お、おい走一大丈夫か…?」

健二が後ろから声を掛ける。
走一は溜息をついた。
やがて焼け爛れた郵便車からゆらゆらと『何か』が出てきた。
いや、それは『何か』というより『誰か』に近かった。
炎に包まれて顔は見えない。
健二はかすれた声で呟いた。

「幽霊局員…」

BGM:「紅」/XJAPAN

後編に続く
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