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走り屋群像劇場『走り屋3rd+』




【走り屋群像劇場『走り屋3rd+』】

走り屋群像劇場『走り屋3rd+』 ACT8:地獄(後編)BGM:「p-type square」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1197275

路面が凍っていた。
ザワザワと風が吹雪いている。
逢魔ヶ刻。
既に夕日が沈み、間もなく夜の世界がやって来ようとしていた。
助手席のシンジはううぅ…と呻き声を上げながら、冷や汗をこぼし続けている。
走二にはどうすることも出来ない。
そもそも、呪いから庇ったって何なんだ?
科学が発達した現代、そんなものがまだ実在するのか?
霊感の薄い走二には分からなかった。
通常、二十歳までに心霊体験をしていないと霊感が付くことはないと言われている。
走二は二十歳まで心霊体験をしたことはなかった。
なので、今の今まで幽霊とか、呪いとかの類は一切信じていなかった。
だけど、異常に冷や汗を流しながらうなされるシンジを見ていると、非科学的な『何か』が起こったとしか思えなかった。

「シンジ、ごめんな。俺を庇ったんだな…」

静かに走二は呟く。
シンジの父親の言葉が頭をよぎる。

『シンジは普段は飄々としてるが、あいつああ見えても俺より倍以上霊感はある方でな』

シンジに霊感がある。
意外だった。
今までシンジはそんなそぶりを見せたことがなかった。
いや、例え霊感があって幽霊とかが見えていたとしてもシンジは何も言わなかっただろう。
シンジはそういう奴だった。
走二の車はやがて再度山の五辻周辺に突入する。
走二はわずかにスピードを上げた。
車の窓を締め切っているにもかかわらず、びょうびょうと風の音が響く。
風の音と共に、微かに何か『トーン…トーン…』というような音が聞こえてきた。
例えば、小さな太鼓を軽く叩いたような、そんな音。


【再度山 大竜寺伝説】
大龍寺とも表記する。
誰もいない境内から夜中に太鼓の音がする。
真冬の夜中に爺さんが半袖半ズボンに裸足で歩いてて、その爺さんに道を尋ねると爺さんが消える話なども有名。


大きな雲が空を覆っている。
走二は構わず車を走らせる。
走二は走り屋としてはまだ未熟だが、こと緊急事態の時には並外れた運転技術を発揮する。
オーディオからは不思議な曲が流れる。

BGM:「http://www.nicovideo.jp/watch/sm717766

ゲームには多くの謎がある
謎解きに熱くなる
何でチートなんかするんだい
バカげて飽きるだけさ

森を抜けるのはスーパーシンプル
ただ道を曲がるだけでいい
永遠に永遠に


奇妙なことに、今の状況にピッタリと合致したような雰囲気だ。
大竜寺は車ですぐのはずなのに、何故か何十分も車で走ったかのような錯覚だった。
どっぷりと日は暮れ、大竜寺についた頃には空は真っ暗。
オリオン座が静かに輝いているだけだった。
走二はもどかしい気持ちで車を降りると、大竜寺の駐車場でシンジを引きずり降ろした。
その間にもシンジはただ唸るだけ。

トーン…トーン…

何処かから太鼓のような音が聞こえる。
目の前には大竜寺の赤門が聳え立つ。
走二はぶるりと身震いした。

17574233_324554116_1large.jpg

シンジを落とさないように抱えて、赤門の右側をくぐる。
赤門をくぐった後、コンクリートで舗装された急斜面の右カーブが続く。
ゆっくりと、上ってゆく。
流石に、シンジを抱えていると息が切れる。
やがて少し開けた場所に出た。
銀色のベンチと、自販機が左手に見える。
そこから更に上へと登った。
右手に沢山の地蔵が見えた後、阿吽の像が両側に。
もっと奥には、左手に西国33観音…また地蔵が見える。
無我夢中で登った。
ゼェーゼェーと息を乱しながら、走二は大竜寺の門を叩いた。
そこで、力尽きた。

トーン…トーン…トトーン…

意識が飛ぶ前、近くでまたあの太鼓のような音が聞こえたような気がした。


目が覚めると、走二は寺にいた。
暖かな日差しの中、きちんと布団をかぶって。
辺りを見回すがシンジの姿はない。

「シンジ!?」

慌てて布団から這い出てシンジを探した。
すると、突然目の前に住職らしき人が立っていた。

「目が覚めたかね?」

「あの、えと俺…」

何から説明したら良いのか、走二がオロオロとしていると、住職は柔和に笑う。
何処か雰囲気がシンジに似ている。

「驚いたよ、いきなりシンジ君を背負ったまま倒れていたから」

「あの、俺…!」

「大体何があったのかは予想はつくが…何があったんだい?」

住職はそう言うと、座布団を敷いて正座した。
話すと長くなりそうだった。
走二は今まであった出来事を包み隠さず話した。
最初、住職は黙って聞いていたが、話が進むにつれ苦渋の表情を浮かべてゆく。

「そいつは…まずいことになったな…」

「俺、どうしたらいいんでしょうか?」

大竜寺の住職は黙って首を振った。
走二に向かって分かりやすく解説する。

「走二君とやら…君が読み終えようとしたこの詩は『トミノの地獄』という呪歌だよ」

「トミノの地獄?じゅか?」

「そう、呪いの歌と書いて呪歌。本来なら陰陽師や祈祷師が祈祷の場を清めるために唱える歌で、福を呼び込んだり、災いや魔物を避けるために唱える歌なんだが…」

大竜寺の住職はフッと影を落とす。

「この紙に書いてある『トミノの地獄』に関しては逆。声に出してこの詩を読むと『凶事』が起こるんだよ」

「そんな…」

「ありえないと思うだろう?でも、事実なんだ」

「じゃあシンジは助からないんですか!?」

「地獄に引き込む歌でもあるからねぇ…難しいが、やってみよう」

「どうやって」

「君も協力してくれるかい?」

「俺で良ければ」

「そうかい。シンジ君はよい友を持ったな…」

住職は微笑う。
ついて来なさい、と走二を呼び寄せた。
走二は黙って住職の後をついて行く。
本尊の前には、シンジが寝かせられていた。
相変わらず汗を流し、高熱を出し、うなされている。
住職はふと振り返ると走二に話しかけた。

「走二君、共振という現象は知っているかい?」

「共振ですか?えーっと…分かりません」

走二は科学には疎い。
照れくさそうに頭を掻く。
そんな走二に分かりやすく解説する。

「共振、共鳴とも言うね。ま、小難しく考える必要はないよ。呪歌を打ち消すのに呪歌をぶつけようって話さ」

「はい?」

大竜寺の住職は今さらっと重大な事を言った気がする。

「走二君、『トミノの地獄』以外で何か好きな詩はあるかい?」

「好きな…詩?」

「何でもいい。合図を出したら読み上げて欲しいんだ」

「そんなもん」

あるわけ無いでしょう、と言いかけてはたと口をつぐんだ。
心当たりはあった。

「あ…」

「心当たりはあるんだね?」

「マザーグース…」

「…いいだろう、準備をしよう」

住職はロウソクに火を灯す。
昼間の大竜寺にゆらゆらと蝋燭の火が揺れる。
住職は何かを唱える。
走二もそれに習う。

『総ての神話の始まりの地にして終焉の地』

『各地の神話が終りを迎え、終息せしめる末法において 各地の言の葉が収束され、新たなる神話出國』

『彼方より此処へ 此処より彼方へ』

『世は再び神代の國へと産まれ出でん』

『國産み 神威 神産み』

『努々忘るる言なかれ さすれば和することありなむ』

シンジが苦しそうにのたうち回っている。
住職は走二に「今!」と声を掛けた。
走二はマザーグースの中で比較的短いあの英詩を高らかに読み上げる。
昼間の寺に夜の英詩。
違和感があったが、その違和感さえ凌駕する何かが渦巻いている。

『I see the moon』

『And the moon sees me』

『God bless the moon』

『And God bless me.』

祈るように、呼びかけるように。
走二は歌って唄って謳って詩って詠って唱って謡った。

トーン…トーン…

また、あの太鼓の音が聞こえた。
苦しんでいたシンジは、やがてビクリと身体を震わすと、静かになった。
汗も引いている。
住職はシンジに駆け寄って様子を見る。
ホッとすると、大丈夫だと言った。

その後、シンジは丸2日寝込んだ。
目が覚めた時、シンジは後にこう語った。

「地獄みたいな熱くて赤い世界に連れて行かれた夢を見た。もうだめだと思った時、走二の声と、太鼓の音が聞こえた気がした」

と。

END.
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