FC2ブログ

HOME>スポンサー広告

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
HOME>その他の民話・伝説

法華行者



Drift走り屋er 番外編

【法華行者】

これから、仏教の話をしよう。

再度山大龍寺。
阿吽の像の前に佇む男が2人。
1人は、春日シンジ。
もう1人は、高木ヒロユキという。
春日シンジは珍しく僧侶の姿だった。
高木ヒロユキは珍しくカジュアルな私服姿だった。

珍しいな、君が袈裟着るなんて

高木ニマニマしながら物珍しそうにシンジの衣服を見つめている。

…悪かったかよ。着替える暇が無かったんだよ

シンジはそう言うと、大きめのカバンからいつもの私服を取り出すと、その場で着替え始める。
シンジは再度山大龍寺で荒行を終えた所だったのである。
高木は真顔でシンジが着替えるのを見ている。

肌白いなー、いいカラダしてるなー

ちょっ…ガン見してんじゃねぇよ!ドスケベ!!

別に男同士だから構わんだろ?

そりゃ、そうだけど…

手早く衣服を着替える。

意外に細いのなーw

だから、凝視すんな!

あれ、シンジ君…すごい古傷あるね

ああこれか。これは昔交通事故に遭ったやつのだよ

痣もあるね

住職してると色々あるんだよ

シンジは若干慌てて着替えを終えると、カバンを持って赤門へと向かう。
高木も一緒に歩き出す。

シンジ君は霊感強いんだって?

知らん。幽霊が見えるとかそんなもんは幻想・まやかしです

すっぱりと切り捨てる。

いやいやいや、君この間

いいですか、幽霊なんてプラズマです。もしくは目の錯覚です

普段は大っぴらに言わないが、住職をしているだけあって、シンジにはかなり強力な霊感があるという。
しかし、面と向かって尋ねられると否定し、すっとぼける。

幽霊が見えると言われても否定はしないし、馬鹿にしたりなんかしないよ。この世界には、科学や言語で説明できないことがあるのも確かだ

高木は先程買った缶コーヒーを開けて飲み始めると柔和な笑顔を浮かべながら言う。
シンジは高木の顔を物珍しそうに凝視する。

…高木さんって霊感ないから怪奇現象否定論者かと思ってた

警察官という仕事上、怪奇現象を認めることは出来ないってだけだよ。個人的に興味は、ある

あれ、高木さん意外にロマンチスト?

やかましいw

高木は苦笑いしながら、コーヒーを煽った。
ほどよい苦味と酸味が心地良い。
シンジは愛車の黒いESSEにカバンを押し込むと、赤門の前に座り込む。
高木も隣に座り、シンジに缶コーヒーを手渡す。
シンジはさんきゅ、と礼を述べてからプルタブを開ける。

シンジ君、君の目にはどんな世界が映っているんだ?

うまく言語化出来ない。仮に言語化したとしても、情報に齟齬が発生するかも知れない

小難しいこと言うねぇ

知覚出来ない、知覚しにくい世界っていうのはそういうものなんだよ

…質問を変えよう。相良 走一君…彼はよく奇妙な現象に巻き込まれることが多いけどどうなんだい?

どう、とは

禅問答みたいになってきたな…個人的にだけど、走一君には何かが『ある』としか思えないんだよ

シンジは驚いた表情で高木を見つめていたが、やがてくっくと押し殺した笑いを上げる。

高木さんは霊感なしの零感なのにスゲェやw

何か『ある』んだね?

ああ、まあな。走一さんに何か『ある』って思った根拠を訊きたいところだが…

何て言うのかな…走一君は何処か浮世離れしているというか…何か『持ってる』というか…時々、そう思える瞬間があるんだ。警察官という仕事上、色々な人を見てきているが、走一君みたいなタイプは初めてなんだよ…

高木は頭を掻きながら答える。
シンジはニヤニヤと笑いながら、大人しく高木の話を聞いていた。

気になる?

気になるっていうか…不思議っていうか。何処か人を惹きつけるというか…恋とかそういうのじゃなくて、その…

高木さん、しどろもどろじゃないっすかw

やかましいw

高木はコーヒーを飲み干すと、ゴミ箱へと缶を捨てる。
ゴミはきちっと分別してゴミ箱に。

高木さんの言うことはあながち外れじゃねぇよ

シンジはポケットから煙草とライターを取り出し、火を点ける。
実に旨そうに煙を吸うと、白い煙を細く長く吐き出す。
煙草は二十歳になってから。

走一さんはな、自覚はしていないけど法華行者なんだよ

今度は高木がぽかんとする番だった。

ほっけ?魚の?

違ぇよ馬鹿w 法華行者だよほっけぎょうじゃ

なにそれ?

シンジは苦笑いしながら高木の質問に答えてゆく。

あーえー…っと…

シンジは言葉を選びながら、相良走一について語ってゆく。

…ここだけの話、俺は走一さんを尊敬している。高木さんは、走一さんの事がなんとなく気になる。ここまでは分かるよな?

うん。その理由をオカルト的観点で教えて欲しいって無茶ぶりしたわけだけど

高木さん、前世とか守護霊とか信じる方です?

否定はしないよ

なら話は早い。走一さんが持ってる『何か』の正体は『法華行者』なんですよ

高木は参ったという風に頭を掻いた。
完全にお手上げである。

その、俺は頭の出来が少々悪いんでね。法華行者というのがよく分からないんだが

ああ、なるほど。そこが分からなかったのか

シンジはゆっくりと噛み砕いて説明してゆく。

高木さん、中学生の時、歴史で『日蓮宗』って言葉聞かなかったですか?

そういえば…うっすら…

日蓮宗のお経とか聞いたことないです?

ぎゃーてーぎゃーてー

それ般若心経。宗派違いますよ

うーん…?

日蓮宗の経はね、『南無妙法蓮華経』っていうんです。略して『法華経』っていうんですけど

へぇ…

そのお経…『法華経』の教えを説いて回った人物を総称して『法華行者』っていうんです

修験者みたいなもんか

似たようなもんですね。法華行者は良くも悪くも人を惹きつけるんですよ。走一さん自身は自覚がないみたいですけどね

自覚がないっていうのはどういうことだい?

そのまんまの意味ですよ。走一さんは走り屋としても努力の人だけど、それを誇示したりはしない。だけど、敵対するととことん厄介っすね。否定してボッコボコにぶつかり合う

時々、妙に落ち着いてたり、怖いくらいに自分を貫き通す部分、あるからなぁ…

だからこそ、走一さんは元暴走族の副隊長が務まったんだろうけど

…シンジ君、何で走一君が元ヤンだと知ってるの?

長年、住職や走り屋してると色々情報が入ってくるもんですよ

シンジはニィっと微笑った。

【法華行者 ほっけぎょうじゃ】
日蓮宗は、真言宗や天台宗と並んで、最も呪術を多く行う仏教宗派であり、今日でもその活動は盛んである。
日蓮宗では祈祷者のことを『験者(げんざ)』と呼ぶが、正式には100日間の水行(荒行)を経て、初めて祈祷の相承が許される。
と、言ってもこうした荒行のシステムは、宗祖日蓮(1222~1282)の時代には無く、ずっと後で整ったものであり、極端に言えば日蓮の行った祈祷とはまた別物である。
日蓮の伝説の中で最も有名なのが、極楽寺の忍性と祈雨(雨乞いの呪術)の験を競った話が有名。
忍性は真言律宗の僧であることから、恐らく請雨経法か孔雀経法か水天供のような密教行法を行ったと考えられる。
対して、日蓮は単純に『法華経』を唱え続けたと考えられる。
日蓮をはじめとした法華行者達の根幹にあるのは、狂おしいばかりの『法華経』への帰依である。
また密教を始め他の宗派や他の経典を否定、激しく批判したため、他宗の僧ら数千人により松葉ヶ谷の草庵が焼き討ちされたり、伊豆国伊東(現在の静岡県伊東市)へ流罪(※いわゆる島流し。伊豆法難という) されるなどの困難が降りかかったという。
ちなみに、法華行者の祈祷法として有名なものに『木剣加持』がある。
『法華経』の『陀羅尼品(だらにほん)』にある神呪を唱え、数珠をつけた木札状のものを勇ましく打ち鳴らして祈るものだが、これも日蓮宗の独創であって、『法華経』の中では説かれていないのである。
この他にも、方位や年まわり、日の吉凶などの多くは陰陽道に基づくものであり、良くも悪くも他の経典を排除したがために、日蓮宗の呪法者には独特の思考・言動が形成され、今日に伝えられているという。


最近では、走一さんも少し性格が丸くなったみたいですけどね

…そうかぁ?未だに尖ったナイフのような奴だと思うが

ぶつかり合って意見を言うのは未だ健在してますけど、否定することは少なくなったと思いますよ

ああ…言われてみれば

高木は言いながら、本日2本目の缶コーヒーを開けた。
シンジも同時にさっき貰った缶コーヒーを開封する。
高木はチラリとシンジを見ながら、ぼそっと呟いた。

しかしシンジ君、怖いくらいに君は年齢の割には落ち着き払ってるし、人間の心理や行動をよく見ているね

高木さんが警察官として色々な人を見てきたのと同じように、俺も住職として色々と見てきているんですよ

シンジは柔和に笑う。
再度山大龍寺に、冷たく優しい風がそよそよと音を立ててゆく。
また、雪が降りそうだった。

END.
スポンサーサイト

この記事のトラックバックURL

http://paradox07.blog68.fc2.com/tb.php/445-5e97e71e

コメント

コメントする

管理者にだけ表示を許可する

  Template Designed by めもらんだむ RSS

special thanks: Sky Ruins, web*citronDW99 : aqua_3cpl Customized Version】


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。