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035:極限

【035:極限】

極寒の地で暮らす人々にとって、日本の冬の気候はまだ暖かい…赤ん坊レベルだと言える。
だがしかし生粋の日本人である俺にとってはこの寒さは尋常じゃないと思う。
さて、どうしたものだろうか。

「なあ、涼子ちゃん」

俺、流 健二(ながれ けんじ)は彼女に声をかけるが、彼女からの返事はない。
しかばねのようだ…って冗談で笑って済ませられるレベルじゃないから!!

「涼子ちゃん!?」

「どうしました、健二さん? 後ろにお花畑が見えますよ」

「ダメぇぇ!! 三途の川渡っちゃダメぇぇ!!」

「あらあらうふふ」

そろそろ涼子ちゃんは極限まできているようだ。
さて。
何故こんな事になったかと言うと。
時はクリスマス。
街には何組ものカップルがイチャイチャパラダイスする日であり、今までの俺ならカップルに飛び蹴りを食らわせたい衝動に駆られる日であった。
だが、今年は違う。
涼子ちゃんという彼女が出来た今年のクリスマスは、いわば俺は勝ち組でリア充な訳だ。
そこで凝ったクリスマスにしようと画策した俺は、とあるアトラクションに入ろうと涼子ちゃんを誘った。

『-48℃体験アトラクション』

今思えばやめておけばよかったような気がするぜ俺の馬鹿野郎。
冷凍庫みたいな所に涼子ちゃんと2人押し込められ、キャッキャウフフな展開に持ち込めた…のはいいが。
いざ出る時になってドアが開かないと切羽詰った声でアトラクションのスタッフに死刑宣告されたのだ。
なんてこったい。
ドアを押したり蹴ってみたりしたが、どうやら頑丈に出来ているらしくビクともしない。
真冬の工事現場で赤い棒振ってる職業の俺は少々の寒さには耐えられる自信はあるが、問題は涼子ちゃんだった。
そう、彼女は繊細でデリケートな女性。
早くここから脱出しなければ凍死してしまう。
寒さで震える涼子ちゃん。
それはそれで可愛いんだが、既に顔が青白い。
焦りは増すばかりである。

「涼子ちゃん、これ着てな」

俺は自分のコートを涼子ちゃんに覆い被せると、扉とにらめっこする。

「それじゃ健二さんが寒いですよ…」

「はっはっ。 伊達に真冬の工事現場で赤い棒振ってませんよ」

「声震えてますよ健二さん」

「武者震いです」

「何と戦ってるんですか」

「しいて言うなら寒さかな、と。 とにかく、俺の見てない所で勝手に召されないでくれよ」

俺は屈伸運動を始める。
寒さで筋肉が硬直し、ギッキョギッキョと妙に機械チックな屈伸運動だった。
ほっとけ。

「さて、涼子ちゃん。 しっかり意識は保っといてくれよ」

「何するんですか健二さん?」

涼子ちゃんが聞き終わる前に、俺は飛んだ。
富田林。

「らいだぁぁぁ~きぃぃぃっく!!」

渾身のライダーキックを炸裂させて脱出を試みた訳だが、これ著作権とか大丈夫だろうか。
薄ぼんやりそんな事を考えながら俺は地面に不時着した。
と、同時に生暖かい外の空気と感動のご対面。
どうやら俺がライダーキックを炸裂させた瞬間、外にいた誰かがバールのようなもので何とかドアをこじ開けてくれた模様。
うむ、ちと予定は狂ったが計画通り。
デス●ートではないよ。

「大丈夫か、涼子ちゃん!」

俺は再び冷凍庫側に戻り、真っ先に涼子ちゃんを抱えてドアの外へ。

「健二さん、ありがとう」

そうそう、やっぱり涼子ちゃんの笑顔は最高だよなぁ。
平謝りするアトラクションのスタッフはそっちのけで、俺は涼子ちゃん観察を続けた。

ごっ。

脳天にげんこつを落とされ、俺はふと我に返る。

「ってーな!!」

何でトラブルに巻き込まれた被害者の俺が脳天殴られなきゃなんねーんだよ、ヴォケ。
振り返ると、警察官と呼ばれる職業の方々が数人。
どうやらアトラクションのスタッフが慌てて呼んだらしい。
その中に見知った顔が1人。

「た、高木さん!?」

「俺にライダーキックを喰らわせといて無視とはいい度胸だな、青年」

「いや、これはドアを蹴り破ろうとしてですね…というか不可抗力ですよ?」

「クリスマスに彼女とデートですか。 性なる夜ですかコノヤロー」

「ちょ、微妙に漢字間違ってますよ!?」

「うるせぇクソガキ。 こちとらクリスマスでも仕事なんだよド畜生が」

「知りませんよ!! 何か今日の高木さん妙に怖い!!」

「煩悩退散!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁ!! 拳銃つきつけるのやめてぇぇぇ!!」

その日、大阪の某アトラクションで男の悲鳴が上がったと小さな都市伝説になりました。

END.
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