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HOME>100のお題その1

043:写真

写真は真実を写す、とよく言ったものだ。
俺は君を愛してる。
だからこそ、その真実を写真に残そうと思う。

【043:写真】

「何だよ…これ…どういう事だよ!?」

男は妻に問い詰める。
妻…もとい女性は黙ったままその写真を見つめている。
写真はごくごく普通の写真だった。
そう、その女性の顔写真。
何も驚く事はない筈だった。
だがしかし、問題はその写真に入ってる日付。
50年以上前の日付なのに、その女性の写真には変化や老化といったものが見られないのだ。
写真に細工の跡はない、だからこそ女性の顔写真は矛盾しているのだ。

「どういう事だって言ってんだよ!!」

「言っても無駄だし、信じてもらえないと思うわ」

女性は驚くほど冷たい声で言い放つ。
大きく溜め息をつくと、男の手から写真を奪い取った。

「さよなら」

「待てよ!!」

男は咄嗟に女性の手を掴む。
女は少しだけ驚きの色を浮かべ、男の手を振りほどこうとするが、男の手はしっかりと女の白い手を掴んだまま離そうとはしなかった。

「どういうことか、教えてくれないと納得出来ない」

男は怯えるどころが真っ直ぐに女の顔を見つめている。
女はやがて観念して写真の謎を語り始める。

「八百比丘尼(やおびくに)って知ってるかしら?」

「やお…びくに…?」

「じゃあ、人魚は?」

男は黙って頷いた。
どうやら人魚は知っているようだった。

【 八百比丘尼(はっぴゃくびくに、やおびくに)】
日本のほとんど全国に分布している伝説。
地方により細かな部分は異なるが大筋では以下の通り。
若狭国のとある漁村の庄屋の家で、浜で拾ったという人魚の肉が振舞われた。
村人たちは人魚の肉を食べれば永遠の命と若さが手に入ることは知っていたが、やはり不気味なためこっそり話し合い、食べた振りをして懐に入れ、帰り道に捨ててしまった。
だが一人だけ話を聞いていなかった者がおり、それが八百比丘尼の父だった。
父がこっそり隠して置いた人魚の肉を、娘が盗み食いしてしまう。
娘はそのまま、十代の美しさを保ったまま何百年も生きた。
だが、結婚しても必ず夫に先立たれてしまい、父も年老いて死んでしまった。
終いには村の人々に疎まれて尼となり、国中を周って貧しい人々を助けたが、最後には世を儚んで岩窟に消えたという。

「どう?納得した?」

「そんな…まさか…」

「いつまでも老化しない私を不気味に思う人が大半なの。結婚しても必ず夫は先に死んでしまう。この写真は、前の夫が記念として撮ったものなの」

男は何も言わない。
唖然とした表情で女性を見つめることしか出来ない。

「だからね、私は写真を撮られるのが嫌いなの」

女は冷徹な表情で机の引き出しからおもむろにライターを取り出すと、写真に火をつける。

「写真なんて、大嫌い」

ぽろぽろと零れ落ちる、涙。

「秘密を知られたから、私はあなたと一緒にいることは出来な…」

「待てよ」

男は囁く。

「何でそれをもっと早く言ってくれなかったんだ?たとえ君が不老不死でも俺は君を愛していることに変わりはないのに」

「え…」

「写真を撮ろう、今度は俺とツーショットの写真を」

男はそう言うと優しく笑った。

END.
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