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046:ジッポの匂い

【046:ジッポの匂い】

思えば俺が喫煙を始めたきっかけは何だったかな、と白濁した煙を吹き出しながら考える。
そうそう、喫煙を始めたきっかけは俺が高校生の時の事だっけ。

「おい、犯罪者の息子」

いじめっ子に見事目をつけられた俺は、いじめっ子達の手下達に無理矢理校舎裏まで連れていかれた。
ドナドナか。
悪意にまみれた視線が俺を睨めつける。
慣れたけど、不愉快な事に変わりはない。

「何とか言えよ」

いじめっ子の常套句が飛び出す。

「何とか」

ささやかな反抗として何とか言ってみぶへぅえ!!
やはりというかテンプレというかコテコテに殴られた。
いじめっ子…もといお猿の大将は18歳にも関わらず、煙草に火をつけ始めた。
タスポがなかった時代、高校生でもこっそり煙草が買えた時代。
そうだ、俺の原点はここからだった。

「俺はな、お前みたいな犯罪者が大嫌いなんだよ」

へえ、いつの間にか「犯罪者の息子」が「犯罪者」に昇格してるし。

「…くっ…はっ…」

「何だよ気持ちワリィ!!」

また殴られた。
殴ったね、親父にもぶたれたことないのに。
かの有名なアニメのセリフが頭をかすめる。

「ハハハハハハ」

笑ってみた。
ピンチの時ほどふてぶてしく笑うものだってゲームの登場人物から教わった世代だし。

「ウゼーんだよ!!」

俺は目を瞑る。
俺は誰かに迷惑をかけていたか?
人より何かが劣っていたか?
法を犯したのは俺自身だったか?
傲慢な態度で人と接したか?
俺はいじめられて当然の人間なのか?
全部否であると判断した俺は

「あのさぁ、」

×××君でも×××××に反撃くらいするもんだぜ?
のびたくんでもじゃいあんにはんげきくらいするもんだぜ?

一直線真っ直ぐまっすぐにお猿の大将向かってダダダッヂュラララ!!
煙草、もろとも蹴り上げ蹴っ飛ばしてお猿の大将驚いてこっち見てるけど俺はもうお前を血祭りにあげないと気が済まないから。

「言い忘れてたけど」

反撃する度胸はないとか弱いとか何勝手に固定観念持っちゃってくれてんの馬鹿じゃないのばかじゃないの?
い っ ぺ ん 死 ん で み る ?

「俺、柔道の段持ちなんですけど。何か質問ある?」

赤い血飛沫飛んでる血痕顔潰れてますよ俺も拳も潰れてるけどこれ柔道とかあまり関係ないマウントポジションでただ馬乗りになって殴り続けて止まらないだけだし躊躇するのもメンドくせぇや取り敢えず白目剥いとけ!

俺が血祭りにあげた、お猿の大将は地面に沈んでいた。
周りから「ひっ」と悲鳴が上がる。
一睨みしたら全員逃げていった。

転がった煙草の箱と、ジッポと。
そっと拾って徐に煙草を取り出して。
火を、つける。
そっと吸い込んで。

「げほげほっ!!」

始めて吸った煙草の味は、微かにジッポの匂いが混じって不味かったのを憶えている。

END.
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